秘密保持契約/NDA/CA
ひみつほじけいやく
秘密保持契約とは、秘密情報を相手に開示する前提として締結する契約をいいます。英語ではNon-Disclosure Agreementと呼ばれ、NDAと略されます。Confidentiality Agreementの略であるCAも同じ趣旨で使われる呼称です。クリニックの承継では、候補者に医院の情報を渡す前に必ず結ぶものとして位置づけられています。
医院の承継でこの契約が特に重視されるのは、情報が漏れたときの影響が他の業種より大きいからです。医院名や院長の交代予定が地域に伝わると、患者さんは「この医院は続くのだろうか」と不安になり、通院を控える方が出ます。スタッフの耳に入れば、雇用の先行きが見えないことから離職につながります。患者数が落ち、スタッフが減った状態では、医院の評価そのものが下がってしまいます。承継の交渉が始まる前に、案件の価値が損なわれるという事態が起こり得ます。
契約で定められるのは、主に次のような内容です。まず秘密情報の範囲で、口頭で伝えた内容や、開示を受けたこと自体を含めるかどうかを定めます。次に目的外利用の禁止です。承継の検討という目的以外に情報を使わないこと、たとえば近隣で開業する際の参考にしないことを約束させます。さらに第三者への提供の制限、情報の管理方法、検討が終わった際の返却または破棄、そして違反した場合の責任を定めます。契約の有効期間は、検討が終わった後も一定期間続く形にするのが一般的です。
医院の承継で特に注意が必要なのが、患者情報の扱いです。カルテなどの診療情報は個人情報であり、なかでも病歴は要配慮個人情報として厳しい取扱いが求められます。承継の検討段階で候補者に渡す資料には、患者さん個人が特定される情報を含めないのが原則です。患者数や年齢層、疾患の構成といった統計的な形に加工して示します。秘密保持契約を結んでいるからといって、個人が特定される診療情報をそのまま渡してよいわけではありません。
開示の範囲は、段階的に広げていくのが実務の基本です。最初は医院名を伏せた概要のみを示し、候補者が関心を持った段階で秘密保持契約を締結します。その後に実名を開示し、さらに検討が進めば決算書やレセプトの推移といった詳細な資料を渡します。デューデリジェンスの段階では契約書の原本や労務関係の資料まで見せることになるため、開示の範囲が広がるにつれて管理の重要性も増していきます。
候補者が個人の医師である場合と法人である場合で、契約の相手方の設計も変わります。法人が買い手であれば、その法人の役員や従業員、さらに依頼している専門家にも同じ義務が及ぶようにしておく必要があります。仲介業者やアドバイザーが関わる場合は、その事業者との間でも別に秘密保持契約を結びます。
限界も理解しておく必要があります。秘密保持契約を結んでも、情報が漏れたこと自体を証明するのは容易ではありません。違反があったときに損害額を立証することも難しく、契約を結んだから安心というものではありません。実務上は、契約を結んだうえで、そもそも渡す情報を必要最小限にとどめるという二重の備えが求められます。誰にどの資料を渡したかを記録しておくことも、後の確認に役立ちます。
秘密保持契約は形式的な書類として扱われがちですが、医院の承継においては案件の価値を守る最初の防波堤です。ひな型をそのまま使うのではなく、患者情報の扱いや開示範囲を自院の事情に合わせて調整することをおすすめします。
医院の承継でこの契約が特に重視されるのは、情報が漏れたときの影響が他の業種より大きいからです。医院名や院長の交代予定が地域に伝わると、患者さんは「この医院は続くのだろうか」と不安になり、通院を控える方が出ます。スタッフの耳に入れば、雇用の先行きが見えないことから離職につながります。患者数が落ち、スタッフが減った状態では、医院の評価そのものが下がってしまいます。承継の交渉が始まる前に、案件の価値が損なわれるという事態が起こり得ます。
契約で定められるのは、主に次のような内容です。まず秘密情報の範囲で、口頭で伝えた内容や、開示を受けたこと自体を含めるかどうかを定めます。次に目的外利用の禁止です。承継の検討という目的以外に情報を使わないこと、たとえば近隣で開業する際の参考にしないことを約束させます。さらに第三者への提供の制限、情報の管理方法、検討が終わった際の返却または破棄、そして違反した場合の責任を定めます。契約の有効期間は、検討が終わった後も一定期間続く形にするのが一般的です。
医院の承継で特に注意が必要なのが、患者情報の扱いです。カルテなどの診療情報は個人情報であり、なかでも病歴は要配慮個人情報として厳しい取扱いが求められます。承継の検討段階で候補者に渡す資料には、患者さん個人が特定される情報を含めないのが原則です。患者数や年齢層、疾患の構成といった統計的な形に加工して示します。秘密保持契約を結んでいるからといって、個人が特定される診療情報をそのまま渡してよいわけではありません。
開示の範囲は、段階的に広げていくのが実務の基本です。最初は医院名を伏せた概要のみを示し、候補者が関心を持った段階で秘密保持契約を締結します。その後に実名を開示し、さらに検討が進めば決算書やレセプトの推移といった詳細な資料を渡します。デューデリジェンスの段階では契約書の原本や労務関係の資料まで見せることになるため、開示の範囲が広がるにつれて管理の重要性も増していきます。
候補者が個人の医師である場合と法人である場合で、契約の相手方の設計も変わります。法人が買い手であれば、その法人の役員や従業員、さらに依頼している専門家にも同じ義務が及ぶようにしておく必要があります。仲介業者やアドバイザーが関わる場合は、その事業者との間でも別に秘密保持契約を結びます。
限界も理解しておく必要があります。秘密保持契約を結んでも、情報が漏れたこと自体を証明するのは容易ではありません。違反があったときに損害額を立証することも難しく、契約を結んだから安心というものではありません。実務上は、契約を結んだうえで、そもそも渡す情報を必要最小限にとどめるという二重の備えが求められます。誰にどの資料を渡したかを記録しておくことも、後の確認に役立ちます。
秘密保持契約は形式的な書類として扱われがちですが、医院の承継においては案件の価値を守る最初の防波堤です。ひな型をそのまま使うのではなく、患者情報の扱いや開示範囲を自院の事情に合わせて調整することをおすすめします。