非専任契約
ひせんにんけいやく
非専任契約とは、複数の仲介業者やアドバイザーと並行して契約し、同時に支援を受けられる形態をいいます。一般媒介と呼ばれることもあります。クリニックの承継では、一社に独占的に依頼する専任契約と対になる選択肢として位置づけられます。
この形が選ばれる理由は、候補者に出会う経路を増やせることにあります。医院の承継では、医療法により診療所の開設者が原則として医師でなければならないため、買い手候補は開業を考えている医師か医療法人に限られます。母集団が小さいうえ、事業者ごとに持っている候補先の範囲は異なります。ある事業者は大学の医局や医師会とのつながりが強く、別の事業者は開業支援を通じて開業希望の医師を多く抱えている、といった違いがあります。複数に依頼すれば、こうした異なる経路を同時に使えます。
一社に依頼して候補が現れないまま数か月が過ぎるという事態を避けられる点も利点です。専任契約では、契約期間が終わるまで他の事業者に依頼できません。医療分野の実績が十分でない事業者を選んでしまった場合、時間だけが過ぎることになります。非専任であれば、成果の出ている事業者に比重を移すという調整ができます。
ただし、医院の承継において非専任契約には実務上の難しさが伴います。最も大きいのが情報管理です。複数の事業者が並行して候補者に案件を持ち込むと、誰にどこまでの情報を開示したのかを把握できなくなります。医院名を伏せた概要資料が広く配られ、実名を知る人が増えれば、地域に情報が漏れる可能性が高まります。院長の交代が近いという話が伝わると、患者さんは通院を控え、スタッフは離職を考え始めます。案件の価値そのものが損なわれるという事態が、交渉が始まる前に起こり得ます。
候補者の重複も生じます。同じ医師に対して、別々の事業者から同じ案件が持ち込まれるという状況です。候補者からすれば、この案件はあちこちに出回っていると受け取られ、条件を引き下げて構わないという判断につながることがあります。売り急いでいるという印象を与えてしまえば、価格交渉で不利になります。どちらの事業者を通じた提案なのかが不明確になり、報酬の帰属をめぐって争いになる例もあります。
事業者側の動機づけが弱まるという問題もあります。成功報酬型では成約しなければ報酬は発生しません。他社に先を越されるおそれがある状態では、案件概要書の作成や候補者への働きかけに手間をかけにくくなります。結果として、どの事業者も本腰を入れないまま時間が過ぎることがあり得ます。医院の承継は候補者の探索に時間がかかるため、この影響は小さくありません。
そのため実務では、非専任で進める場合に一定の運用が必要になります。まず、依頼する事業者を二社から三社程度に絞ることです。数を増やせば増やすほど管理は難しくなります。次に、どの事業者がどの候補者に接触したかを譲渡側自身で記録しておくことです。実名開示は必ず自分の承諾を経る運用とし、事業者が独自に判断できないようにしておきます。契約書では、報酬の帰属をどう決めるかについても取り決めておきます。
医院の承継では、情報が漏れることの影響が他の業種より大きいため、専任契約を選ぶ院長が多い傾向にあります。それでも、一社の候補範囲に不安がある場合や、すでに依頼した事業者から成果が出ていない場合には、非専任という選択が現実的な意味を持ちます。どちらを選ぶにしても、契約期間、解約の条件、契約終了後の報酬の扱いを書面で確認しておくことをおすすめします。
この形が選ばれる理由は、候補者に出会う経路を増やせることにあります。医院の承継では、医療法により診療所の開設者が原則として医師でなければならないため、買い手候補は開業を考えている医師か医療法人に限られます。母集団が小さいうえ、事業者ごとに持っている候補先の範囲は異なります。ある事業者は大学の医局や医師会とのつながりが強く、別の事業者は開業支援を通じて開業希望の医師を多く抱えている、といった違いがあります。複数に依頼すれば、こうした異なる経路を同時に使えます。
一社に依頼して候補が現れないまま数か月が過ぎるという事態を避けられる点も利点です。専任契約では、契約期間が終わるまで他の事業者に依頼できません。医療分野の実績が十分でない事業者を選んでしまった場合、時間だけが過ぎることになります。非専任であれば、成果の出ている事業者に比重を移すという調整ができます。
ただし、医院の承継において非専任契約には実務上の難しさが伴います。最も大きいのが情報管理です。複数の事業者が並行して候補者に案件を持ち込むと、誰にどこまでの情報を開示したのかを把握できなくなります。医院名を伏せた概要資料が広く配られ、実名を知る人が増えれば、地域に情報が漏れる可能性が高まります。院長の交代が近いという話が伝わると、患者さんは通院を控え、スタッフは離職を考え始めます。案件の価値そのものが損なわれるという事態が、交渉が始まる前に起こり得ます。
候補者の重複も生じます。同じ医師に対して、別々の事業者から同じ案件が持ち込まれるという状況です。候補者からすれば、この案件はあちこちに出回っていると受け取られ、条件を引き下げて構わないという判断につながることがあります。売り急いでいるという印象を与えてしまえば、価格交渉で不利になります。どちらの事業者を通じた提案なのかが不明確になり、報酬の帰属をめぐって争いになる例もあります。
事業者側の動機づけが弱まるという問題もあります。成功報酬型では成約しなければ報酬は発生しません。他社に先を越されるおそれがある状態では、案件概要書の作成や候補者への働きかけに手間をかけにくくなります。結果として、どの事業者も本腰を入れないまま時間が過ぎることがあり得ます。医院の承継は候補者の探索に時間がかかるため、この影響は小さくありません。
そのため実務では、非専任で進める場合に一定の運用が必要になります。まず、依頼する事業者を二社から三社程度に絞ることです。数を増やせば増やすほど管理は難しくなります。次に、どの事業者がどの候補者に接触したかを譲渡側自身で記録しておくことです。実名開示は必ず自分の承諾を経る運用とし、事業者が独自に判断できないようにしておきます。契約書では、報酬の帰属をどう決めるかについても取り決めておきます。
医院の承継では、情報が漏れることの影響が他の業種より大きいため、専任契約を選ぶ院長が多い傾向にあります。それでも、一社の候補範囲に不安がある場合や、すでに依頼した事業者から成果が出ていない場合には、非専任という選択が現実的な意味を持ちます。どちらを選ぶにしても、契約期間、解約の条件、契約終了後の報酬の扱いを書面で確認しておくことをおすすめします。