正常収益
せいじょうしゅうえき
正常収益とは、一時的な要因や非経常的な要因を取り除き、通常の運営で期待される収益力を示す考え方です。正常収益力とも呼ばれます。医院の承継では、譲渡価格の算定の基礎となる数字であり、この調整を正しく行えるかどうかが評価全体の精度を決めます。
決算書に記載された利益をそのまま使えない理由は、個人経営の医院や小規模な医療法人では、経営者の判断によって数字が動くからです。院長は自身への報酬額を決められる立場にあり、その水準によって利益は大きく変わります。税負担を抑える目的で報酬を高く設定していれば利益は小さく見え、逆に低く抑えていれば利益は大きく見えます。どちらも医院そのものの稼ぐ力を表していません。
そこで行うのが正常化調整です。医院の承継で調整の対象になる代表的な項目を挙げると、まず院長への役員報酬があります。承継後に新院長が受け取る妥当な水準に置き換えて計算し直します。次に、院長の家族に支払われている給与です。実際に勤務していない、あるいは勤務の実態に見合わない額が支払われている場合、その差額を調整します。
私的な支出の混在も確認事項です。院長個人の自動車の費用、生命保険料、交際費、旅費、通信費といった項目に、医院の運営とは直接関係のない支出が含まれていることがあります。これらは承継後には発生しない費用であるため、加算して収益力を引き直します。反対に、承継後に必要となるのに現状では計上されていない費用もあります。院長が自ら行っていた経理や労務の業務を外部に委託する必要があれば、その費用を織り込みます。
一時的な要因の除去も重要です。特定の年だけ発生した高額な設備の修繕費、補助金や助成金の収入、感染症の流行など外的な要因による患者数の急増や急減、退職金の一括支給といった項目は、通常の運営では毎年起こるものではありません。これらを含めたまま計算すれば、その年だけ収益力が高く、あるいは低く見えてしまいます。
不動産の扱いも医院では論点になります。院長が個人で保有する建物を医院が賃借している場合、その賃料が世間相場から離れていることがあります。相場より低ければ利益は大きく見え、高ければ小さく見えます。承継後の賃貸借条件を前提に、妥当な賃料に置き換えて調整します。逆に、院長が保有する不動産をそのまま買い手が取得する場合は、賃料そのものが発生しなくなるため、別の整理が必要になります。
医療機器のリースと減価償却の扱いも確認します。リース料として費用処理されているものと、購入して減価償却しているものでは、費用の現れ方が違います。承継後に同等の設備を維持するために必要な投資額を見込んでおかないと、収益力を過大に評価することになります。
そして最も大切なのが、単年ではなく複数年の推移で見ることです。直近一期の数字だけを調整しても、それが偶然良かった年である可能性があります。実務では三期から五期程度をそれぞれ調整し、傾向を確かめます。患者数が減少傾向にあるのか、横ばいなのか、増加しているのかという方向性は、調整後の利益額そのものより重要な判断材料になります。
正常収益は、譲渡価格の算定に直結します。年買法では、この数字に一定の年数を掛けてのれん代を算出するため、調整を一つ誤れば金額は数百万円単位で動きます。譲渡側としては、私的な支出を加算して収益力を高く示したいという動機が働きますが、根拠のない調整はデューデリジェンスの段階で必ず問題になります。領収書や契約書といった裏づけを揃えたうえで、医療分野に詳しい税理士と一緒に整理しておくことをおすすめします。
決算書に記載された利益をそのまま使えない理由は、個人経営の医院や小規模な医療法人では、経営者の判断によって数字が動くからです。院長は自身への報酬額を決められる立場にあり、その水準によって利益は大きく変わります。税負担を抑える目的で報酬を高く設定していれば利益は小さく見え、逆に低く抑えていれば利益は大きく見えます。どちらも医院そのものの稼ぐ力を表していません。
そこで行うのが正常化調整です。医院の承継で調整の対象になる代表的な項目を挙げると、まず院長への役員報酬があります。承継後に新院長が受け取る妥当な水準に置き換えて計算し直します。次に、院長の家族に支払われている給与です。実際に勤務していない、あるいは勤務の実態に見合わない額が支払われている場合、その差額を調整します。
私的な支出の混在も確認事項です。院長個人の自動車の費用、生命保険料、交際費、旅費、通信費といった項目に、医院の運営とは直接関係のない支出が含まれていることがあります。これらは承継後には発生しない費用であるため、加算して収益力を引き直します。反対に、承継後に必要となるのに現状では計上されていない費用もあります。院長が自ら行っていた経理や労務の業務を外部に委託する必要があれば、その費用を織り込みます。
一時的な要因の除去も重要です。特定の年だけ発生した高額な設備の修繕費、補助金や助成金の収入、感染症の流行など外的な要因による患者数の急増や急減、退職金の一括支給といった項目は、通常の運営では毎年起こるものではありません。これらを含めたまま計算すれば、その年だけ収益力が高く、あるいは低く見えてしまいます。
不動産の扱いも医院では論点になります。院長が個人で保有する建物を医院が賃借している場合、その賃料が世間相場から離れていることがあります。相場より低ければ利益は大きく見え、高ければ小さく見えます。承継後の賃貸借条件を前提に、妥当な賃料に置き換えて調整します。逆に、院長が保有する不動産をそのまま買い手が取得する場合は、賃料そのものが発生しなくなるため、別の整理が必要になります。
医療機器のリースと減価償却の扱いも確認します。リース料として費用処理されているものと、購入して減価償却しているものでは、費用の現れ方が違います。承継後に同等の設備を維持するために必要な投資額を見込んでおかないと、収益力を過大に評価することになります。
そして最も大切なのが、単年ではなく複数年の推移で見ることです。直近一期の数字だけを調整しても、それが偶然良かった年である可能性があります。実務では三期から五期程度をそれぞれ調整し、傾向を確かめます。患者数が減少傾向にあるのか、横ばいなのか、増加しているのかという方向性は、調整後の利益額そのものより重要な判断材料になります。
正常収益は、譲渡価格の算定に直結します。年買法では、この数字に一定の年数を掛けてのれん代を算出するため、調整を一つ誤れば金額は数百万円単位で動きます。譲渡側としては、私的な支出を加算して収益力を高く示したいという動機が働きますが、根拠のない調整はデューデリジェンスの段階で必ず問題になります。領収書や契約書といった裏づけを揃えたうえで、医療分野に詳しい税理士と一緒に整理しておくことをおすすめします。