EV-EBITDA倍率|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

EV-EBITDA倍率

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EV-EBITDA倍率

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EV-EBITDA倍率とは、企業価値をEBITDAで割って求める倍率の指標です。EVはEnterprise Valueの略で企業価値を意味し、EBITDAは利払い前、税引き前、減価償却前の利益を指します。企業価値がその事業の年間の稼ぐ力の何倍に相当するかを示す数字で、M&Aの場面で価格水準を測る目安として使われます。

計算に用いる企業価値は、株式や持分の価値に有利子負債を加え、そこから手元の現金を差し引いた金額として捉えます。この金額をEBITDAで割ると、事業の稼ぐ力に対して何年分の対価が支払われているかという見方ができます。倍率が高ければ将来の成長を織り込んだ評価、低ければ慎重な評価と読み取れます。

この指標の使い方は、比較にあります。同じ業種で規模の近い取引と並べたときに、検討している案件の倍率が高いのか低いのかを見て、価格水準の妥当性を判断します。逆に、妥当と考える倍率をEBITDAに掛ければ、目安となる企業価値を導くこともできます。マーケットアプローチと呼ばれる評価手法の代表例です。

倍率の水準は一定ではありません。同じ業種でも、規模が大きい事業のほうが倍率は高くなる傾向があります。事業の継続性が高く、経営者個人への依存が小さいためです。成長が見込める分野であれば倍率は上がり、市場の縮小が見込まれる分野では下がります。取引の時期による相場の変動も影響します。

医院の承継においては、この指標を使う場面が限られます。理由は明確で、比較できる取引事例が手に入らないためです。上場企業であれば株価から企業価値を計算できますが、クリニックの承継は当事者間の取引であり、譲渡価格が公開されることはありません。同じ地域の同じ診療科で何倍という数字が実際にどこにあるのかを確かめる手段がないため、倍率を設定する根拠が得にくいのです。

規模の問題もあります。クリニック一施設のEBITDAは、金額としては大きくありません。そのため倍率をわずかに変えるだけで企業価値の算定額が大きく動いてしまいます。三倍と五倍のどちらを採るかで金額が二倍近く変わるような状況では、指標としての実用性が下がります。加えて、院長一人の診療能力に収益が左右される規模では、そのEBITDAが承継後も再現される保証がありません。

こうした事情から、医院の承継で実際に用いられるのは年買法が中心です。時価に引き直した純資産に、正常収益力の数年分を上乗せする方法で、診療所ではおおむね二年から五年程度が目安とされます。この上乗せの年数は、EV-EBITDA倍率と考え方が近いものの、資産価値を別に評価してから収益力を加算するという点で構造が異なります。

一方で、EV-EBITDA倍率が意味を持つ場面もあります。複数の医療機関を運営する医療法人の取引、規模の大きい病院の案件、あるいは医療関連企業が関わる取引では、この指標が交渉の共通言語として使われます。ファンドなど投資収益を目的とする買い手が関与する場合も、倍率で議論されることが多くなります。

指標を目にした際に確認しておきたいのは、EBITDAの算定の前提です。減価償却費のうちどこまでを足し戻したのか、院長への報酬を正常化しているのか、一時的な収入や費用を除いているのかによって数字は変わります。前提の異なる数字で倍率を比べても意味がありません。

EV-EBITDA倍率は、規模のある案件では有用な比較の道具になりますが、クリニック一施設の承継では参考程度にとどめるのが実務的です。どの手法で評価されているのかを確認し、医療分野に詳しい専門家と前提を確かめながら判断することをおすすめします。
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