のれん代
のれんだい
のれん代とは、医院や事業を譲り渡す際の対価のうち、時価に引き直した純資産を上回る部分をいいます。営業権と呼ばれることもあります。貸借対照表に載っている資産と負債を時価で計算し直しても説明のつかない超過分であり、その医院が持つ収益力そのものに対して支払われる金額と考えるとわかりやすくなります。
たとえば、時価純資産が三千万円の診療所が五千万円で譲渡されたとすれば、差額の二千万円がのれん代にあたります。買い手が純資産以上の金額を支払うのは、その医院を引き継げばゼロから開業するよりも早く、確実に収益を上げられると判断しているからです。裏を返せば、のれん代は買い手が見込む将来の利益を前払いしている性格を持っています。
医院継承におけるのれん代の中身は、主に患者基盤です。すでに通院している患者さんがいるという状態は、新規開業では数年かけて築くしかないものです。加えて、駅からの距離や競合の少なさといった診療圏の条件、レセプト枚数と診療単価の安定性、勤務を続けてくれるスタッフ、地域での評判、医師会との関係、看板やホームページを通じた認知なども評価の対象になります。
算定方法にはいくつかの考え方があります。実務で最も多く使われるのは年買法(年倍法)と呼ばれる方法で、役員報酬や一時的な費用を調整した正常収益力に、一定の年数を掛けて算出します。診療所の場合、この年数はおおむね二年から五年程度が目安とされますが、規模が大きい案件ではEBITDAに倍率を掛ける方法や、将来のキャッシュフローを割り引くDCF法が用いられることもあります。いずれの方法でも、直近一期だけでなく数年分の推移を見ることが前提になります。
のれん代を押し下げる要因として代表的なのは、院長個人への依存度の高さです。院長の人柄や技術を目当てに通院している患者さんが多いほど、承継後に患者さんが離れるリスクが高いと判断され、評価は慎重になります。逆に、複数の医師で診療体制が組まれている、スタッフが長く定着している、特定の疾患や検査で地域から選ばれているといった医院は、評価が高くなる傾向があります。設備の老朽化や、カルテの電子化が進んでいないことも減額の要因になります。
のれん代の扱いは、承継のスキームによっても変わります。個人立の診療所を事業譲渡で引き継ぐ場合、のれん代は譲渡対価の一部として明示され、買い手側は営業権として資産に計上します。一方、医療法人の出資持分を譲渡する場合は、持分の評価額の中にのれん相当分が織り込まれる形になり、金額として独立して現れないことが一般的です。
税務上の取扱いも押さえておく必要があります。事業譲渡で取得した営業権は、税務上は耐用年数五年の資産として償却できるため、買い手にとっては数年にわたって費用計上できるという利点があります。また、事業譲渡における営業権の譲渡は消費税の課税対象となります。売り手側では、譲渡益に対する課税の考え方が譲渡の形態によって異なるため、手取り額を試算したうえでスキームを選ぶことが重要です。
会計上は、のれんを一定期間で規則的に償却する処理が一般的で、日本の会計基準では最長二十年以内での償却が求められます。ただし、個人開業医が事業譲渡で引き継ぐ場面では、実務上は税務上の五年償却に沿って処理されることがほとんどです。
なお、すべての医院にのれん代がつくわけではありません。赤字が続いている、患者数の減少が止まらない、診療圏の人口が大きく減っているといった場合には、のれん代が計上されず、時価純資産のみで評価されることもあります。さらに、建物の解体費用や設備の入れ替え費用が見込まれる場合は、その分が純資産から差し引かれ、結果として評価額が簿価を下回ることもあります。継承を検討する段階で、こうした可能性も含めて見通しを立てておくと、判断がぶれにくくなります。
交渉の場では、のれん代は最も意見が分かれやすい項目です。売り手はこれまで積み上げてきた実績を評価してほしいと考え、買い手は引き継いだ後に本当に同じ収益を維持できるかを見ています。この隔たりを埋める方法として、前院長が一定期間は非常勤として診療を続ける、患者数が一定水準を維持できた場合に追加の対価を支払うといった条件が設けられることもあります。
のれん代には唯一の正解となる計算式がありません。同じ数字の医院でも、買い手が誰であるか、その買い手にとってどれだけの意味を持つ医院かによって金額は変わります。複数の候補と話を進めること、そして自院の収益構造を早い段階で整理しておくことが、納得できる評価につながります。
たとえば、時価純資産が三千万円の診療所が五千万円で譲渡されたとすれば、差額の二千万円がのれん代にあたります。買い手が純資産以上の金額を支払うのは、その医院を引き継げばゼロから開業するよりも早く、確実に収益を上げられると判断しているからです。裏を返せば、のれん代は買い手が見込む将来の利益を前払いしている性格を持っています。
医院継承におけるのれん代の中身は、主に患者基盤です。すでに通院している患者さんがいるという状態は、新規開業では数年かけて築くしかないものです。加えて、駅からの距離や競合の少なさといった診療圏の条件、レセプト枚数と診療単価の安定性、勤務を続けてくれるスタッフ、地域での評判、医師会との関係、看板やホームページを通じた認知なども評価の対象になります。
算定方法にはいくつかの考え方があります。実務で最も多く使われるのは年買法(年倍法)と呼ばれる方法で、役員報酬や一時的な費用を調整した正常収益力に、一定の年数を掛けて算出します。診療所の場合、この年数はおおむね二年から五年程度が目安とされますが、規模が大きい案件ではEBITDAに倍率を掛ける方法や、将来のキャッシュフローを割り引くDCF法が用いられることもあります。いずれの方法でも、直近一期だけでなく数年分の推移を見ることが前提になります。
のれん代を押し下げる要因として代表的なのは、院長個人への依存度の高さです。院長の人柄や技術を目当てに通院している患者さんが多いほど、承継後に患者さんが離れるリスクが高いと判断され、評価は慎重になります。逆に、複数の医師で診療体制が組まれている、スタッフが長く定着している、特定の疾患や検査で地域から選ばれているといった医院は、評価が高くなる傾向があります。設備の老朽化や、カルテの電子化が進んでいないことも減額の要因になります。
のれん代の扱いは、承継のスキームによっても変わります。個人立の診療所を事業譲渡で引き継ぐ場合、のれん代は譲渡対価の一部として明示され、買い手側は営業権として資産に計上します。一方、医療法人の出資持分を譲渡する場合は、持分の評価額の中にのれん相当分が織り込まれる形になり、金額として独立して現れないことが一般的です。
税務上の取扱いも押さえておく必要があります。事業譲渡で取得した営業権は、税務上は耐用年数五年の資産として償却できるため、買い手にとっては数年にわたって費用計上できるという利点があります。また、事業譲渡における営業権の譲渡は消費税の課税対象となります。売り手側では、譲渡益に対する課税の考え方が譲渡の形態によって異なるため、手取り額を試算したうえでスキームを選ぶことが重要です。
会計上は、のれんを一定期間で規則的に償却する処理が一般的で、日本の会計基準では最長二十年以内での償却が求められます。ただし、個人開業医が事業譲渡で引き継ぐ場面では、実務上は税務上の五年償却に沿って処理されることがほとんどです。
なお、すべての医院にのれん代がつくわけではありません。赤字が続いている、患者数の減少が止まらない、診療圏の人口が大きく減っているといった場合には、のれん代が計上されず、時価純資産のみで評価されることもあります。さらに、建物の解体費用や設備の入れ替え費用が見込まれる場合は、その分が純資産から差し引かれ、結果として評価額が簿価を下回ることもあります。継承を検討する段階で、こうした可能性も含めて見通しを立てておくと、判断がぶれにくくなります。
交渉の場では、のれん代は最も意見が分かれやすい項目です。売り手はこれまで積み上げてきた実績を評価してほしいと考え、買い手は引き継いだ後に本当に同じ収益を維持できるかを見ています。この隔たりを埋める方法として、前院長が一定期間は非常勤として診療を続ける、患者数が一定水準を維持できた場合に追加の対価を支払うといった条件が設けられることもあります。
のれん代には唯一の正解となる計算式がありません。同じ数字の医院でも、買い手が誰であるか、その買い手にとってどれだけの意味を持つ医院かによって金額は変わります。複数の候補と話を進めること、そして自院の収益構造を早い段階で整理しておくことが、納得できる評価につながります。