ノンネームシート|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

ノンネームシート

のんねーむしーと

ノンネームシート

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ノンネームシートとは、医院名や所在地といった特定につながる情報を伏せ、概要のみを示した資料をいいます。ノンネームと呼ばれることもあります。クリニックの承継では、候補者に最初に見てもらう資料として使われ、関心を持った相手とだけ次の段階へ進むという流れをつくる役割を担っています。

この資料が必要とされるのは、承継の検討が地域に知られると案件の価値が損なわれるからです。医院名が伝わり、院長の交代が近いという話が広がると、患者さんは通院を控え、スタッフは離職を考え始めます。患者数が落ちた状態では、譲渡の条件そのものが悪くなります。そのため、候補者を広く探しながら医院を特定させないという相反する要求を満たす必要があり、その手段としてノンネームシートが用いられます。

記載される内容は、候補者が検討に値するかを判断できる最小限にとどめます。診療科目、おおまかな所在地、開業からの年数、施設の面積、診療日数、スタッフの人数、年間の売上規模、譲渡希望額の目安、承継を希望する時期、引継ぎ期間の想定といった項目が並びます。数字はいずれも幅を持たせた表現にするのが一般的です。

作成で最も難しいのは、匿名性をどう保つかです。医院の情報は組み合わせると特定につながります。所在地を市区町村まで書き、診療科目と開業年数を添えれば、その地域の事情を知る医師には見当がついてしまいます。標榜している診療科の組み合わせが珍しい場合、それだけで絞り込まれることもあります。特定の検査機器を備えていると書けば、同様です。そのため所在地は都道府県や地方単位にとどめ、売上や患者数も概算の幅で示すという配慮がなされます。

一方で、情報を削りすぎると候補者が判断できません。診療科も地域も分からない資料では、検討の対象にすらなりません。特定を避けることと、関心を引くことのつり合いをどう取るかが、この資料の作成における実質的な課題です。譲渡側が特定を強く恐れて情報を絞りすぎ、結果として候補者が現れないという事態も起こり得ます。

配布の仕方にも注意が必要です。ノンネームシートは秘密保持契約を結ぶ前に渡すことが多い資料ですが、それは特定できない前提が守られているからこそ成り立ちます。不特定多数に配れば、断片的な情報が地域に流れる可能性が高まります。実務では、配布先を記録し、どの候補者にいつ渡したかを管理します。仲介業者を通じる場合も、配布の範囲を確認しておくべきです。

候補者が関心を示したら、次の段階へ進みます。秘密保持契約を締結し、実名を開示できる状態にしたうえで、より詳しい案件概要書を提示するという流れです。実名を開示できる状態になることをネームクリアと呼びます。ノンネームシートは、この一連の情報開示における入口にあたります。

買い手の立場から見ると、ノンネームシートで分かることには限りがあります。この段階で判断できるのは、診療科と地域と規模の大枠が自分の希望に合うかどうかまでです。収益の実態、患者層、院長への依存度、設備の状態といった重要な要素は、後の段階でしか確認できません。ノンネームシートの数字だけで期待を固めてしまうと、詳細を見た段階で認識の差が生じます。

ノンネームシートは、承継の入口を広げるための道具です。特定されない範囲でどこまで魅力を伝えられるかが作成の要点になりますので、医療分野の承継に慣れた専門家と内容を確認しながら作ることをおすすめします。
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