超過収益|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

超過収益

ちょうかしゅうえき

超過収益

ちょうかしゅうえき

超過収益とは、通常想定される収益水準を上回る収益の部分を指す概念です。同じ規模の資産を用いて事業を行った場合に平均的に得られるはずの利益と、実際に得ている利益との差にあたります。医院の承継では、のれん代がなぜ発生するのかを理論的に説明する際の土台となる考え方です。

考え方を医院に当てはめてみます。ある診療所が、土地や建物、医療機器を合わせて時価で一億円の資産を保有しているとします。もしこの資産を保有しているだけで得られる収益が年間五百万円程度だとすれば、それは資産に対する通常の見返りにあたります。ところが実際にはこの医院が年間一千五百万円の利益を上げているとすれば、差額の一千万円は資産だけでは説明できない収益ということになります。この部分が超過収益です。

超過収益が生じる源泉は、資産以外の要素にあります。医院の場合、最も大きいのはすでに通院している患者さんがいるという状態です。新しく開業すれば、同じ設備を整えても患者さんが集まるまでに数年かかります。その期間を飛ばして収益を得られるという点に価値があります。加えて、駅からの距離や競合の少なさといった診療圏の条件、レセプト枚数と診療単価の安定性、勤務を続けてくれるスタッフ、地域での評判、医師会や連携先の病院との関係、看板やホームページを通じた認知なども源泉になります。

この超過収益を、将来にわたってどれだけ続くと見るかによって、無形の価値の金額が導かれます。永続的に続くと考えれば大きな金額になり、数年で失われると考えれば小さな金額になります。この考え方に基づいて価値を算定する方法は超過収益還元法などと呼ばれ、のれんの理論的な裏づけとして位置づけられています。実務でよく使われる年買法が正常収益力の数年分を上乗せするのは、超過収益が続く年数をおおまかに数年と見積もっているという理解になります。

医院において超過収益を検討する際に、最も重要な論点があります。それは、その超過収益が医院という場に帰属するのか、院長という個人に帰属するのかという点です。患者さんが立地の便利さや設備の充実、スタッフの対応を理由に通院しているのであれば、超過収益は医院に帰属します。院長が退いても患者さんは残るため、承継後も同じ収益が期待できます。しかし患者さんが院長の人柄や技術を目当てに通院しているのであれば、超過収益は院長個人に帰属します。院長が退けば患者さんは離れ、超過収益は消えてしまいます。

この見極めが、医院の評価において決定的な意味を持ちます。決算書の上では同じ利益額であっても、その源泉が場に帰属するのか個人に帰属するのかによって、引き継ぐ側が支払える金額はまったく違ってきます。院長の属人性が高い医院の評価が慎重になるのは、超過収益の帰属をめぐるこの判断によるものです。

見極めの手がかりはいくつかあります。複数の医師で診療体制が組まれているか、指名によらず来院する患者さんの比率がどれくらいか、紹介による患者さんがどこから来ているか、特定の疾患や検査で地域から選ばれているか、スタッフの勤続年数がどうなっているかといった点です。院長が一人で診療し、患者さんが院長を指名して来院しているという状態であれば、超過収益の多くは個人に帰属していると見るのが妥当です。

こうした事情を踏まえて、実務では条件面の工夫がなされます。前院長が一定期間は非常勤として診療を続ける、患者数が一定水準を維持できた場合に追加の対価を支払う、といった形です。これらはいずれも、院長個人に帰属していた超過収益を医院に移すための時間を確保する仕組みと理解できます。

超過収益は、抽象的な概念ですが、医院の価値がどこから生まれているのかを整理するうえで有用な視点です。自院の収益がどの要素に支えられているのかを早めに把握しておくことが、承継の準備につながります。医療分野に詳しい専門家と一緒に確認しておくことをおすすめします。
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