居抜き|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

居抜き

いぬき

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居抜きとは、内装や設備を残した状態で物件を引き継ぐ形態をいいます。飲食店の開業でよく使われる言葉ですが、医院の開業や承継でも同じ意味で用いられます。前の医院の内装、医療機器、家具といったものをそのまま使える状態で引き継ぐため、開業までの費用と期間を大きく抑えられる点が特徴です。

医院を新しく開業する場合、物件を借りてから内装工事を行い、医療機器を購入し、電子カルテを導入するという工程が必要になります。診療所の内装は、診察室、処置室、待合室、レントゲン室といった用途ごとの区画が求められ、給排水や電気設備にも要件があります。これらを一から整えるには相当な費用と数か月の期間がかかります。居抜きであれば、この工程の多くを省略できます。

承継との関係を整理しておくと理解が進みます。医院の承継では、患者さんやスタッフ、地域での評判といった無形の要素を含めて引き継ぐことが本来の目的です。一方、居抜きは物件と設備を引き継ぐという意味に限られます。前の医院が閉院してから時間が経ち、患者さんがすでに離れてしまった物件を引き継ぐ場合は、居抜きではあっても承継とは呼べません。この違いは価格に直結します。患者基盤を引き継げるのであればのれん代が発生し、物件と設備だけであれば資産の価値のみで評価されます。

医院で居抜きを検討する際の確認事項は、他業種より多岐にわたります。まず内装のレイアウトが自分の診療科と診療方針に合っているかという点です。前の医院と同じ診療科であっても、診察室の数、処置室の広さ、検査のスペースの配置は、診療の進め方によって必要な形が変わります。改修が必要になれば、居抜きの利点は減ります。バリアフリーへの対応、待合室の広さ、感染症の患者さんを分ける動線が確保できるかといった点も確認します。

医療機器については、どこまでが引き継ぐ対象に含まれるのかを明確にする必要があります。レントゲン装置、超音波診断装置、内視鏡、自動血球計数装置といった機器のうち、どれが対象で、どれが対象外なのかを一覧で確定させます。所有権がリース会社にある機器は、そのまま使えるわけではなく、リース契約の引継ぎについてリース会社の同意が必要になります。契約の残存期間と残りの支払額も確認事項です。

機器の状態と保守についても確かめておきます。導入からの年数、直近の保守の履歴、部品の供給が続いているか、保守契約を引き継げるかという点です。型式が古く保守部品の供給が終わっている機器は、故障した時点で使えなくなります。レントゲン装置については、設置に関する届出が必要になるため、行政手続きの確認も欠かせません。電子カルテについては、システムのサポート期限、データの移行が可能か、ベンダーとの契約を引き継げるかを確認します。

修繕の責任分担も、後から争いになりやすい部分です。引き継いだ設備が短期間で故障した場合、その費用を誰が負担するのかを契約であらかじめ定めておきます。空調や給排水といった建物側の設備については、貸主の負担か借主の負担かという区分も確認しておきます。

賃貸借契約の扱いも重要です。テナントで診療している物件であれば、契約を引き継ぐには貸主の承諾が必要です。契約の残存期間、賃料、更新の条件、保証金の扱い、そして退去時の原状回復義務の範囲を確認します。原状回復について、前の医院が行った内装工事の分まで負担する形になっていると、将来の退去時に大きな費用が発生します。この条件は契約書を確認しないと分かりません。

こうした確認を経て、引き継ぐ設備の価値を評価します。帳簿上は償却が終わっていても実際に使える機器は価値を認め、使われていない機器や入れ替えが近い機器は価値を下げるという整理を行います。この積み上げが時価純資産の一部を構成します。

居抜きは、費用と期間を抑えられる有力な選択肢ですが、確認を怠ると引き継いだ後に想定外の負担が生じます。設備の一覧と契約書を早い段階で入手し、医療分野に詳しい専門家と確認しながら進めることをおすすめします。
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