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医師会

いしかい

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医師会とは、医師によって構成される職能団体をいいます。全国組織である日本医師会、都道府県ごとの医師会、そして地域ごとの郡市区医師会という重層的な構造を持ちます。加入は任意であり、開業していれば必ず所属しなければならないというものではありません。医院の承継では、前院長が担ってきた医師会での役割を引き継ぐかどうかが検討事項になります。

医師会が担っている役割は多岐にわたります。地域医療の連携体制の整備、休日や夜間の急患診療の当番の分担、学校医や園医の派遣、予防接種や各種健診の受託とその調整、医師会が運営する臨床検査センターや訪問看護ステーションの提供、研修会の開催、行政や関係機関との連絡調整といった活動です。地域によって活動の内容と密度には差があります。

承継においてこれが論点になる理由は、医師会を通じた活動が医院の収益と患者さんの流れに関わっているためです。学校医や園医を務めていれば、その報酬が収入の一部を構成します。予防接種や健診を受託していれば、それが患者さんとの接点になります。休日夜間の当番を担っていれば、地域での認知につながります。医師会が運営する検査センターを利用していれば、検査の委託先として組み込まれています。

そのため、承継後にこれらの役割を引き継げるかどうかが、収益の見通しに影響します。加入は個人単位であることが通例で、前院長が退会し、新院長が新たに入会するという手続きになります。入会にあたっては、地域の医師会が定める手続きを経る必要があり、審査や紹介を要する場合もあります。地域によっては入会金の負担が生じ、その額が小さくないこともあります。学校医や園医の担当については、医師会の内部での調整を経て決まるため、前院長が務めていたからといって自動的に引き継げるわけではありません。

さらに実務上重要なのが、医師賠償責任保険との関係です。日本医師会の会員を対象とした賠償責任保険が提供されており、多くの開業医がこれを利用しています。会員でなければこの制度は使えないため、医師会に加入しない場合は民間の保険で備える必要があります。診療に伴う賠償のリスクは避けられないものであり、承継の際にはこの点の手当てを確認しておく必要があります。前院長の在任中に生じた診療について後から請求が生じる可能性もあるため、保険の適用がどの期間の診療に及ぶかという確認も欠かせません。

もう一つの側面として、地域の医師との関係があります。医師会は、近隣の医療機関との連携の場でもあります。患者さんを紹介し合う関係、入院が必要な場合の受け入れ先、在宅医療での役割分担といったつながりは、日常的な交流の中で築かれます。新しく地域に入る医師にとって、この関係を一から作るのは容易ではありません。前院長が医師会での挨拶に同行し、後継者を紹介することで、関係が引き継がれやすくなります。承継の条件を話し合う段階で、この協力を依頼しておくことには実益があります。

一方で、加入しないという選択もあり得ます。会費の負担、当番や役職に伴う時間的な拘束を考えて、加入せずに診療を行う医師もいます。診療科や地域の事情によっては、医師会を通じた活動が収益に大きく関わらない場合もあります。ただしその場合、賠償責任保険の手当て、休日夜間の対応、地域の連携からの距離といった点を別に考える必要があります。

デューデリジェンスでは、医師会への加入状況、担っている役割、それに伴う収入と費用、そして承継後に引き継げる見込みを確認します。学校医や園医の報酬が収益に組み込まれている場合、承継後に引き継げないのであれば、その分は正常収益力から差し引いて考えることになります。

医師会に関わる事項は、契約書のような形で確認できるものが少なく、前院長への聞き取りによって把握することになります。トップ面談やマネジメントインタビューの場で、担っている役割と地域での関係について率直に確認しておくことをおすすめします。
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