事業報告書|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

事業報告書

じぎょうほうこくしょ

事業報告書

じぎょうほうこくしょ

事業報告書とは、事業年度における活動の内容や財務の状況を報告する文書をいいます。医療法人については、医療法によって作成と提出が義務づけられており、事業年度の終了後、一定の期間内に所轄庁へ届け出ることが求められます。医院の承継では、この提出が適切に行われてきたかが確認の対象になります。

医療法人が提出する書類は、事業報告書のほかに、財産目録、貸借対照表、損益計算書、監事の監査報告書などが含まれます。これらをまとめて提出することで、法人の運営状況を所轄庁が把握できる仕組みになっています。加えて、これらの書類は法人の事務所に備え置き、請求があれば閲覧に応じることが求められます。医療法人が非営利法人であり、地域の医療を担う公共性の高い存在であることから、運営の透明性を確保するための制度として設けられています。

株式会社との違いは、この提出義務の性質にあります。株式会社であれば、決算の内容を税務署に申告する義務はあっても、事業内容を所轄庁に報告する仕組みは一般にありません。医療法人は、医療法に基づく認可を受けて設立され、行える業務の範囲も制限されている法人であるため、その運営が制度の枠内で行われていることを示す責任を負います。一定の規模を超える医療法人については、会計基準に従った書類の作成や、外部による監査が求められる場合もあります。

承継の場面でこの書類が重要になる理由は三つあります。

第一に、法人の運営が適正に行われてきたかを示す資料になるという点です。提出が滞っている、提出した内容に不備がある、備え置きの義務が果たされていないといった状態が判明すれば、法人の管理体制に問題があることを示します。所轄庁から改善を求められる可能性があり、承継後に対応の負担が生じます。デューデリジェンスでは、過去数年分の提出の履歴と控えを確認します。

第二に、財務の実態を把握する資料になるという点です。事業報告書に添付される財産目録や貸借対照表は、法人が保有する資産と負債を示します。決算書と併せて確認することで、資産の内容、借入の状況、内部留保の蓄積の度合いが見えてきます。持分のある医療法人であれば、この蓄積が持分の評価額に直結するため、承継の負担を測る基礎になります。

第三に、法人が行っている業務の範囲を確認する資料になるという点です。事業報告書には、診療所の運営状況に加えて、附帯業務として行っている事業の内容が記載されます。健診や予防接種の受託、介護に関わる事業、医療関係者の養成に関わる活動などです。定款に記載された目的と実際の業務が一致しているか、附帯業務として認められる範囲を超える事業を営んでいないかを、この書類から確認できます。範囲を超える業務があれば、行政の指導を受ける可能性が残ります。

承継に伴う実務としては、提出の主体が変わらない点を押さえておきます。持分の譲渡や社員の入れ替えによって経営権が移る場合、法人格はそのまま残るため、事業報告書の提出義務も引き続き法人に帰属します。承継の年度については、期の途中で理事長が交代することになるため、その事実を報告に反映させることになります。役員変更については別に届出が必要であり、事業報告書とは異なる手続きです。

個人立の診療所については、この制度は適用されません。医療法人という法人格に課される義務であるため、個人が開設する診療所では事業報告書の提出は求められません。ただし、診療所としての開設や変更に関する届出は必要であり、その内容が現状と一致しているかは承継の際に確認すべき事項です。

譲渡側の準備としては、過去数年分の提出の控えを揃えておくことが有効です。提出が漏れている年度があれば、承継の交渉に入る前に対応しておくほうが、後の指摘を避けられます。記載内容と実際の業務が一致しているかの確認も併せて行っておきます。

事業報告書は、医療法人の運営が制度の枠内で行われてきたことを示す資料です。提出の履歴と内容の整合を、医療法人の運営に詳しい専門家と一緒に確認しておくことをおすすめします。
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