実査
じっさ
実査とは、書類の確認にとどまらず、現地に出向いて実際の状態を確かめる調査をいいます。もともとは会計監査において、資産が帳簿に記載されているとおり実在するかを現物で確認する手続きを指す言葉です。医院の承継では、デューデリジェンスの一環として、資料からは分からない実態を目で見て確かめる作業にあたります。
書類だけでは把握できないことは、思いのほか多くあります。決算書に医療機器が計上されていても、それが実際に使われているか、どの程度の状態かは記載されていません。就業規則に定められた勤務時間が、現場の実態と一致しているとは限りません。患者数の集計から待合室の混み具合は読み取れず、診療の流れがどう組まれているかも分かりません。こうした差を埋めるのが実査の役割です。
医院の実査で確認される項目を挙げると、まず建物と内装です。外壁や屋根の状態、雨漏りの痕跡、空調の効き具合、給排水の状態を確かめます。診察室や処置室の広さと配置が診療に適しているか、待合室が患者数に見合っているか、感染症の患者さんを分ける動線が確保できるかを見ます。バリアフリーへの対応、トイレの状態、駐車場の台数と出入りのしやすさも確認事項です。これらは改修が必要になれば費用が発生するため、価格の判断に直結します。
医療機器については、帳簿の一覧と現物を突き合わせます。記載されている機器が実際に存在するか、稼働しているか、使用年数に見合った状態かを確認します。帳簿上は償却が終わっていても十分に使える装置がある一方、記載されているのに実際には使われていない機器が置かれていることもあります。保守の記録を確認し、直近の点検がいつ行われたか、故障の履歴があるかを見ます。電子カルテについては、実際に操作してもらい、動作の速さやデータの蓄積状況を確認します。
在庫の確認も実査の対象です。医薬品や診療材料がどれだけあるか、使用期限が近いものが含まれていないかを見ます。承継の対象に含める場合は、その金額を確定させる必要があります。
帳票類は原本を確認します。賃貸借契約書、リース契約書、業務委託契約書、就業規則、給与台帳、雇用契約書といった書類を実際に手に取り、写しではなく原本があるか、記載内容に不備がないかを確かめます。契約書が見つからない、口約束で運用されている、といった状態が判明することも珍しくありません。医院では、開業から長い年月が経つうちに書類の管理が緩んでいることがあります。
診療の流れを観察することも、医院の実査に固有の価値があります。受付から診察、検査、会計までの動線がどうなっているか、待ち時間がどの程度か、スタッフの動きに無理がないかを見ます。院長がどの業務まで自ら担っているかも確認します。経理や労務、発注、シフトの管理を院長や院長の配偶者が行っている場合、承継後は誰かに引き継ぐか外部に委託する必要があり、新たな費用が発生します。
一方で、医院の実査には他業種にない制約があります。診療時間中に外部の人間が院内を歩き回れば、患者さんが不審に思い、スタッフも承継の話に気づきます。承継が確定する前に情報が漏れると、通院を控える患者さんが出たり、不安からスタッフが辞めてしまったりします。案件の価値そのものが損なわれるため、実施の日程には配慮が必要です。
そのため実務では、休診日や診療時間の終了後に実施する形が取られます。設備業者の点検、あるいは知人の医師の見学といった名目で入る場合もありますが、スタッフが不自然に感じない範囲にとどめる必要があります。診療の流れを観察したい場合は、院長の判断で限られた範囲にとどめるか、事務長など一部の関係者にのみ事情を伝えるという運用になります。
患者さんの情報の扱いにも注意が必要です。カルテなどの診療情報は個人情報であり、病歴は要配慮個人情報として厳しい取扱いが求められます。実査でカルテを確認する必要がある場合も、個人が特定される情報を持ち出すことはできません。件数や年齢層といった統計的な確認にとどめるのが原則です。
実査は、価格の判断を左右する情報が最も多く得られる工程です。限られた時間で何を確認するかを事前に整理し、医療分野に詳しい専門家と同行して進めることをおすすめします。
書類だけでは把握できないことは、思いのほか多くあります。決算書に医療機器が計上されていても、それが実際に使われているか、どの程度の状態かは記載されていません。就業規則に定められた勤務時間が、現場の実態と一致しているとは限りません。患者数の集計から待合室の混み具合は読み取れず、診療の流れがどう組まれているかも分かりません。こうした差を埋めるのが実査の役割です。
医院の実査で確認される項目を挙げると、まず建物と内装です。外壁や屋根の状態、雨漏りの痕跡、空調の効き具合、給排水の状態を確かめます。診察室や処置室の広さと配置が診療に適しているか、待合室が患者数に見合っているか、感染症の患者さんを分ける動線が確保できるかを見ます。バリアフリーへの対応、トイレの状態、駐車場の台数と出入りのしやすさも確認事項です。これらは改修が必要になれば費用が発生するため、価格の判断に直結します。
医療機器については、帳簿の一覧と現物を突き合わせます。記載されている機器が実際に存在するか、稼働しているか、使用年数に見合った状態かを確認します。帳簿上は償却が終わっていても十分に使える装置がある一方、記載されているのに実際には使われていない機器が置かれていることもあります。保守の記録を確認し、直近の点検がいつ行われたか、故障の履歴があるかを見ます。電子カルテについては、実際に操作してもらい、動作の速さやデータの蓄積状況を確認します。
在庫の確認も実査の対象です。医薬品や診療材料がどれだけあるか、使用期限が近いものが含まれていないかを見ます。承継の対象に含める場合は、その金額を確定させる必要があります。
帳票類は原本を確認します。賃貸借契約書、リース契約書、業務委託契約書、就業規則、給与台帳、雇用契約書といった書類を実際に手に取り、写しではなく原本があるか、記載内容に不備がないかを確かめます。契約書が見つからない、口約束で運用されている、といった状態が判明することも珍しくありません。医院では、開業から長い年月が経つうちに書類の管理が緩んでいることがあります。
診療の流れを観察することも、医院の実査に固有の価値があります。受付から診察、検査、会計までの動線がどうなっているか、待ち時間がどの程度か、スタッフの動きに無理がないかを見ます。院長がどの業務まで自ら担っているかも確認します。経理や労務、発注、シフトの管理を院長や院長の配偶者が行っている場合、承継後は誰かに引き継ぐか外部に委託する必要があり、新たな費用が発生します。
一方で、医院の実査には他業種にない制約があります。診療時間中に外部の人間が院内を歩き回れば、患者さんが不審に思い、スタッフも承継の話に気づきます。承継が確定する前に情報が漏れると、通院を控える患者さんが出たり、不安からスタッフが辞めてしまったりします。案件の価値そのものが損なわれるため、実施の日程には配慮が必要です。
そのため実務では、休診日や診療時間の終了後に実施する形が取られます。設備業者の点検、あるいは知人の医師の見学といった名目で入る場合もありますが、スタッフが不自然に感じない範囲にとどめる必要があります。診療の流れを観察したい場合は、院長の判断で限られた範囲にとどめるか、事務長など一部の関係者にのみ事情を伝えるという運用になります。
患者さんの情報の扱いにも注意が必要です。カルテなどの診療情報は個人情報であり、病歴は要配慮個人情報として厳しい取扱いが求められます。実査でカルテを確認する必要がある場合も、個人が特定される情報を持ち出すことはできません。件数や年齢層といった統計的な確認にとどめるのが原則です。
実査は、価格の判断を左右する情報が最も多く得られる工程です。限られた時間で何を確認するかを事前に整理し、医療分野に詳しい専門家と同行して進めることをおすすめします。