シナジー効果|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

シナジー効果

しなじーこうか

シナジー効果

しなじーこうか

シナジー効果とは、事業を統合することによって、それぞれが単独で活動していたときには得られなかった効果が生まれることをいいます。相乗効果と訳されます。医院の承継では、引き継ぐ側がすでに医療機関を運営している場合に、この効果がどれだけ見込めるかが譲渡価格の判断材料になります。

医療機関の承継で見込まれるシナジーには、いくつかの型があります。まず仕入や委託にかかる費用の削減です。複数の医院を運営していれば、医薬品や診療材料の発注量が増えるため、卸との交渉で条件を改善できる余地が生まれます。臨床検査の委託、医療廃棄物の処理、清掃やリネン、電子カルテの保守といった契約も、まとめることで単価を下げられる場合があります。

次に人材の面です。看護師や医療事務のスタッフを複数の施設で融通できれば、急な欠員や繁忙期にも対応しやすくなります。採用や研修を法人としてまとめて行えば、一施設あたりの負担は軽くなります。経理や労務、レセプト請求といった事務を本部でまとめて処理する形にすれば、各医院の院長は診療に専念できます。個人立の診療所では院長が担っていた業務を、法人の仕組みで吸収できるという効果です。

設備の共同利用も挙げられます。高額な検査機器を複数の医院で共用する、一方の医院にある設備を紹介という形で使い合う、といった運用です。それぞれが単独で機器を導入するより投資を抑えられます。

診療面での連携は、患者さんにとっての利点にもつながります。同じ法人内に異なる診療科の医院があれば、患者さんを紹介し合うことができます。内科で診ている方に整形外科の受診が必要になった際、同じ法人内で対応できれば、患者さんは安心して受診できます。在宅医療を担う医院と外来を中心とする医院を組み合わせる、健診に力を入れる医院と専門的な診療を行う医院を組み合わせるといった形もあります。

一方で、医院の承継においてシナジーを見込む際には慎重さが求められます。まず、距離の制約です。仕入の条件改善やスタッフの融通は、施設が地理的に近くなければ実現しません。離れた地域の医院を引き継いでも、実務上のつながりが生まれにくいという現実があります。次に、診療科の違いです。診療科が異なれば、使う医薬品も設備もスタッフの資格も変わるため、共通化できる範囲は限られます。

最も注意すべきなのは、承継の相手が個人の医師である場合、シナジーはほとんど生じないという点です。医院の承継では、勤務医が独立して引き継ぐ形が多くを占めます。この場合、統合する相手方の事業がないため、相乗効果を前提とした価格を提示できません。譲渡側が「シナジーがあるはずだから高く買えるだろう」と考えても、買い手が個人であれば根拠になりません。買い手が誰であるかによって、同じ医院でも支払える金額が変わるのはこの事情によるものです。

シナジーを織り込んだ価格の扱いにも論点があります。相乗効果は買い手側の努力と体制によって生まれるものであり、譲渡側の医院が持っている価値ではないという見方があります。そのため交渉の場では、シナジーの分をどこまで価格に反映させるかが議論になります。実務上は、確実に見込める費用削減の一部を織り込む程度にとどめ、不確実な効果は価格に含めないという整理が取られることが多くあります。

また、統合による効果を見込む一方で、逆に生じる負担も考える必要があります。運営方針を統一しようとしてスタッフが離職する、承継後に診療の進め方を変えて患者さんが離れる、といった事態です。効果を数え上げる前に、既存の運営を尊重する期間を設けることが実務上は重要になります。

シナジー効果は、医療法人やグループが買い手となる場合に意味を持つ概念です。誰が引き継ぐのかによって前提が変わるため、価格の議論では買い手の属性を踏まえて検討することをおすすめします。
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