理事会|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

理事会

りじかい

理事会

りじかい

理事会とは、理事によって構成される医療法人の意思決定機関をいいます。すべての理事で組織され、法人の業務執行に関する重要事項を決議し、理事長による業務の執行を監督する役割を担います。医療法の改正によって設置が法定化され、現在ではすべての医療法人に置かれる機関となっています。

社員総会との役割の違いを整理しておきます。社員総会は法人の最高意思決定機関であり、定款の変更、決算の承認、役員の選任と解任、合併といった根本的な事項を決議します。一方、理事会は日常の業務執行に関する事項を決議します。重要な財産の取得や処分、多額の借入、重要な人事、そして理事長の選出などが理事会の決議事項にあたります。会社の仕組みに例えれば、社員総会が株主総会に、理事会が取締役会に近い位置づけです。

医院の承継においてこの機関が意味を持つ場面を整理します。まず、理事長の選出です。理事長は理事会の決議によって、原則として医師である理事から選ばれます。したがって、承継によって新院長を理事長に就任させるには、理事会での決議が必要になります。理事の構成を掌握していなければ、この決議を行うことができません。

理事の構成は社員総会で決まり、理事長は理事会で決まるという二段の構造になっています。医療法人の意思決定は社員一人につき一票が原則であるため、経営権を移すには社員の構成を変え、そのうえで理事を改選し、理事会で理事長を選出するという順序を踏むことになります。持分を譲り受けただけではこの手続きが進まないという点が、株式会社の承継と決定的に異なります。

もう一つ承継に関わるのが、理事会の決議事項の範囲です。承継の実行に伴って、重要な財産の処分や借入が必要になる場合、理事会の決議を経る必要があります。買い手が医療法人である場合、その法人側でも承継について理事会の承認を得なければなりません。最終契約では、この承認を得ることがクロージングの前提条件として定められるのが通例です。承認の手続きに要する期間を日程に織り込んでおく必要があります。

デューデリジェンスでは、理事会が実際に開催され、議事録が適切に作成されてきたかが確認されます。医院の実務では、理事が院長本人とその配偶者、親族といった構成になっていることが多く、日常的に顔を合わせているため、正式な会議を開かずに運営されている場合があります。重要な決定について理事会の決議を経ていない、議事録が作成されていない、あるいは形式的に作成されているだけという状態が判明することがあります。

これは単なる形式の問題にとどまりません。理事会の決議を要する事項について決議を経ていなければ、その決定の有効性が問題になる可能性があります。多額の借入や不動産の取得といった過去の行為について手続きの不備があれば、承継後に紛争の種として残ります。また、法人の管理体制に問題があることを示すため、所轄庁の指導につながる可能性もあります。

議事録の確認は、法人の履歴を知る手がかりにもなります。過去にどのような決定がなされてきたか、役員の変更がいつ行われたか、関連法人との取引についてどう扱われてきたかが記録されています。院長個人が保有する不動産を法人に賃貸する、院長の親族に業務を委託するといった取引について、手続きが適正に行われてきたかを確かめる資料にもなります。

承継後の運営についても検討が必要です。前院長が承継後も理事として残るのであれば、理事会に出席して議決権を行使することになります。新院長が理事長に就任しても、理事会の構成が前院長側に偏っていれば、実質的な決定権が移らないという事態が生じます。承継の設計では、理事の人数と構成をどう組み替えるかを具体的に決めておく必要があります。

譲渡側の準備としては、理事会の議事録を過去数年分揃え、開催の実態と決議の内容を確認しておくことが有効です。不備があれば、承継の交渉に入る前に整理しておくほうが指摘を避けられます。医療法人の法務に詳しい専門家に確認を依頼しておくことをおすすめします。
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