監事|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

監事

かんじ

監事

かんじ

監事とは、医療法人の業務と会計を監査する役員をいいます。株式会社の監査役に相当する立場で、理事による業務執行が適正に行われているかを確認し、財務に関する書類の内容を監査します。医療法人には一人以上の監事を置くことが求められており、これは法令上の義務です。

監事の職務は、大きく二つに分かれます。一つは業務監査で、理事の業務執行が法令や定款に違反していないかを確認します。もう一つは会計監査で、財産の状況や決算に関する書類の内容を確かめます。監査の結果は監事の監査報告書としてまとめられ、事業年度ごとに所轄庁へ届け出る書類の一部となります。

この機関に求められる最も重要な性質は、独立性です。監事は理事や職員を兼ねることができません。監査する立場の者が監査される立場を兼ねていれば、監査が形だけのものになってしまうためです。加えて、法人と特別の利害関係にある者は監事になれないという考え方があり、所轄庁の指導においては、理事の親族や、法人と取引関係にある者を監事とすることは適当でないとされる場合があります。運用は自治体によって差がありますが、独立性を保つことが制度の前提です。

医院の実務でこの点が問題になりやすい理由があります。診療所を運営する医療法人は、院長本人とその配偶者、親族が理事となっている構成が多くあります。人員が限られる中で監事を確保する必要があるため、知人の医師や顧問の税理士、あるいは親族が名前を貸しているだけという状態になっていることが少なくありません。

デューデリジェンスでは、この状態が確認の対象になります。監事が実際に監査を行っているか、監査報告書が毎年作成されているか、その内容が形式的なものにとどまっていないか、そして監事が理事の親族や取引関係者ではないかという点です。監事が長年一度も監査を実施していない、監査報告書が作成されていない、理事の親族が監事になっているといった状態が判明すれば、法人の管理体制に関する問題として扱われます。所轄庁の指導を受ける可能性があり、承継後に対応の負担が生じます。

さらに、監事が置かれていない、あるいは任期が満了したまま改選が行われていないという状態もあり得ます。役員の任期は一定期間に限られており、その期間ごとに改選の手続きが必要です。登記が更新されていない場合、その修正から着手することになります。

承継における手続きとしては、監事の変更も社員総会の決議によって行われます。承継によって理事の構成が変わるのであれば、監事についても新しい体制に合わせて検討する必要があります。前の理事の親族が監事に就いている場合、承継後は独立性の観点から問題が生じるため、交代させることになります。監事の変更についても、所轄庁への届出が必要です。

後任の監事を誰にするかは、承継の実務で意外に手間のかかる部分です。医師である必要はありませんが、業務と会計の両面を監査する立場であるため、一定の知識が求められます。理事の親族を避け、法人と取引関係にない人を探す必要があるため、承継の直前に慌てて探すと候補が見つからないという事態が生じます。顧問の税理士が法人と取引関係にあれば、その税理士を監事とすることには問題が生じ得ます。承継の計画に組み込んで、早い段階から候補を検討しておくべき事項です。

監事の役割は、承継後の運営においても意味を持ちます。新院長が理事長として運営を担う際、業務と会計が適正に行われていることを外部の目で確認する機関があることは、法人の信頼を支えます。事業報告書や財務に関する書類は、所轄庁への届出と閲覧への対応が求められるため、監査の内容が形だけのものであってはなりません。

譲渡側の準備としては、監事の就任状況、任期、過去の監査報告書を確認しておくことが有効です。不備があれば承継の交渉に入る前に整理しておくほうが、指摘を避けられます。医療法人の法務に詳しい専門家に確認を依頼しておくことをおすすめします。
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