譲渡価格|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

譲渡価格

じょうとかかく

譲渡価格

じょうとかかく

譲渡価格とは、医院を譲り渡す際の対価として実際に合意される金額をいいます。評価によって算定された理論上の価値とは別のもので、双方の交渉を経て最終的に決まる数字です。同じ医院であっても、買い手が誰であるか、どの時点で交渉するかによって金額は変わります。

算定の出発点となるのは、時価に引き直した純資産に、収益力を評価したのれん代を上乗せする考え方です。土地や建物、医療機器を時価で計算し直したうえで負債を差し引き、そこに患者基盤や立地といった無形の価値を加算します。のれん代は、役員報酬や一時的な費用を調整した正常収益力に一定の年数を掛けて算出する年買法が実務では多く用いられます。ただしこれは目安であり、そこから交渉が始まります。

価格を動かす要因のうち、最も大きいのは院長個人への依存度です。院長の人柄や技術を目当てに通院している患者さんが多いほど、承継後に患者さんが離れるリスクが高いと判断され、評価は下がります。反対に、複数の医師で診療体制が組まれている、スタッフが長く定着している、特定の疾患や検査で地域から選ばれているといった医院は、評価が高くなる傾向があります。患者数が増加傾向にあるか減少傾向にあるかという推移も、単年の利益額より重く見られます。

設備の状態も価格に直結します。医療機器や電子カルテが古く、承継後すぐに入れ替えが必要であれば、その費用は買い手の負担になるため、その分が差し引かれます。建物の老朽化が進んでいる場合や、テナントの原状回復義務が残っている場合も同様です。診療圏の人口動態は将来の収益に関わるため、人口減少が続く地域では評価が慎重になります。

対象範囲の設定も金額を左右します。不動産を含めるのか含めないのか、医療機器のうちリース中のものをどう扱うのか、在庫の医薬品や診療材料を含めるのかによって、同じ医院でも提示額は大きく変わります。価格を比較する際は、その金額が何を含んだものかを揃えて見る必要があります。

引継ぎの条件も価格に反映されます。前院長が承継後も一定期間は非常勤として診療を続ける形であれば、患者さんの離脱が抑えられるため、買い手は高い金額を出しやすくなります。反対に、承継日をもって前院長が完全に離れるのであれば、リスクを織り込んだ金額になります。スタッフの雇用継続を条件とするかどうかも、交渉の材料になります。

潜在的なリスクの存在も見逃せません。デューデリジェンスの過程で未払残業代や係争中の案件、契約上の負担といった簿外債務が判明すれば、その分が減額されるか、最終契約で表明保証と補償の条項として整理されます。医療法人を引き継ぐ場合、法人格が残るため、こうした負担も一緒に承継されることになります。

支払いの方法も条件の一部です。クロージング時に一括で支払う形が基本ですが、資金調達の都合から分割払いとする例もあります。分割の場合は譲渡側に未回収のリスクが残るため、担保や保証の設計が必要になります。患者数が一定水準を維持できた場合に追加の対価を支払うという、業績連動の条件が設けられることもあります。

譲渡側が押さえておくべきなのは、合意した金額がそのまま手元に残るわけではないという点です。譲渡益に対する課税、仲介業者への報酬、専門家への費用が差し引かれます。医療法人であれば、譲渡対価として受け取るのか役員退職金として受け取るのかで税務上の扱いが変わり、手取り額に差が生じます。金額を決める前に試算しておくべきものです。

譲渡価格に唯一の正解はありません。複数の候補と話を進めて比較の基準を持つこと、そして自院の収益構造と設備の状態を早い段階で整理しておくことが、納得できる金額につながります。
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