第三者継承|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

第三者継承

だいさんしゃけいしょう

第三者継承

だいさんしゃけいしょう

第三者継承とは、親族や院内の関係者ではない相手が後継者となる承継の形をいいます。クリニックの承継では、面識のない開業希望の医師、他院を運営する医療法人、複数の医療機関を展開する法人グループなどが候補になります。院長のお子さんが医師にならなかった、医師になっても別の診療科を選んだ、勤務医に承継の意思がなかったという場合に選択されることが多く、近年その比重が高まっています。

第三者継承の最大の課題は、相手を見つけること自体が難しい点です。医療法により診療所の開設者は原則として医師でなければならないため、買い手候補は事実上、開業を考えている医師か医療法人に限られます。一般的な企業のM&Aのように、資金力のある事業会社が広く手を挙げるという構図にはなりません。母集団が小さいうえ、候補者側にも診療科の適合、勤務地の希望、家族の事情といった条件があるため、条件が噛み合う相手にたどり着くまでに時間がかかります。

そのため、工程が親族内継承より長くなります。相手探しから始まり、秘密保持契約の締結、ノンネームシートによる一次検討、実名開示、案件概要書の提示、トップ面談、条件のすり合わせ、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージング、引継ぎ期間という順に進みます。相談から引渡しまで一年前後、相手探しが難航すれば二年以上かかることもあります。

進め方は、情報開示を段階的に行うのが基本です。医院名や所在地が早い時期に外部へ漏れると、患者さんやスタッフに不安が広がり、通院の中断や離職につながりかねません。そこで最初は医院名を伏せた概要のみを示し、関心を持った候補者と秘密保持契約を結んでから実名を開示するという手順を踏みます。この段階の管理は、承継そのものの成否に直結します。

第三者継承では、当事者に面識がないぶん、条件を客観的な資料で示す必要があります。親族内であれば口頭で共有されていた情報も、第三者に対しては数字と書面で説明しなければなりません。直近数年分の決算書、レセプトの推移、患者層の内訳、診療圏の人口動態、スタッフの雇用条件、賃貸借契約やリース契約の内容、設備の使用年数といった資料が整っているかどうかが、交渉の進み方を大きく左右します。

譲渡価格は、時価に引き直した純資産に、収益力を評価したのれん代を上乗せして算定するのが一般的です。第三者継承では、親族内継承と違って価格を情に流されずに決められる反面、買い手が「引き継いだ後に同じ収益を維持できるか」を厳しく見ます。院長の人柄や技術を目当てに通院している患者さんが多い医院ほど、承継後の離脱リスクが織り込まれ、評価は慎重になる傾向があります。

一方で、第三者継承には親族内継承では得られない利点があります。相続や贈与の問題を切り離して考えられること、譲渡対価という形で引退後の資金を確保しやすいこと、そして後継者を親族という枠に縛られず、経営意欲と診療能力を基準に選べることです。地域に医療機関を残せるという点でも、閉院とは大きく異なります。

成否を分けるのは、引継ぎ期間の設計です。当事者に面識がないため、前院長が数か月から一年ほど診療を続けながら、患者さんとスタッフを新院長に引き合わせる期間が特に重要になります。この期間を確保できるかどうかで、承継後の患者離れとスタッフの離職はまったく違ってきます。第三者継承を検討する場合は、価格の交渉と同じ重さで引継ぎ体制を話し合っておくことをおすすめします。
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