退職給与引当金
たいしょくきゅうよりきん
退職給与引当金とは、将来支払うことになる退職金に備えて、会計上あらかじめ費用として計上しておく引当金をいいます。現在の会計基準では退職給付引当金という名称が用いられています。医院の承継では、この計上の有無が財務の実態を測るうえで重要な確認事項になります。
考え方の基礎にあるのは、費用をいつの期間に割り当てるかという発想です。退職金は退職の時点でまとめて支払いますが、その支払いの原因はスタッフが在職して働いてきた期間にあります。支払った年にだけ費用として計上すると、その年の利益が大きく落ち込み、それまでの年の利益は実態より大きく見えてしまいます。そこで、在職している期間にわたって少しずつ費用として認識し、将来の支払いに備えた負債として貸借対照表に計上します。
ここで押さえておくべきなのが、会計上の扱いと税務上の扱いが一致しないという点です。かつては税務上も一定の範囲で引当金の計上が認められていましたが、この制度は税制改正によって廃止され、経過措置を経て現在は損金として認められません。つまり、会計上は引当金を計上して費用としても、税務上はその分が損金不算入となり、課税所得の計算では加算されることになります。実際に退職金を支払った時点で損金となる扱いです。
この違いが、医院の実務に影響します。中小規模の医療法人や個人立の診療所では、税務申告を基礎とした会計処理を行っていることが多く、税務上損金にならない引当金をあえて計上する動機が生まれません。その結果、退職金の規定はあるのに引当金は計上されていないという状態が一般的になります。決算書の負債の部を見ても、将来の支払い義務は現れません。
承継の場面では、この計上されていない負担を洗い出す作業が必要になります。退職金の規定を確認し、対象となるスタッフごとに勤続年数と算定の基礎となる給与額を突き合わせ、現時点で全員が退職したと仮定した場合の支給額を計算します。この金額が簿外債務として扱われ、時価純資産を算定する際に負債として織り込まれます。長く勤めているスタッフが複数いれば、相当な額になります。
規定が存在しない場合でも、確認を省略することはできません。明文化された規定がなくても、これまで退職者に一定の基準で退職金を支払ってきた実績があれば、慣行として支払う義務が生じると判断されることがあります。過去の支給の履歴を確認する作業が必要です。
スキームによる扱いの違いも押さえておきます。個人立の診療所を事業譲渡で引き継ぐ場合、雇用関係は自動的には承継されないため、譲渡側がそれまでの勤続分を精算して支払うという整理が一つの方法になります。この場合、支払った退職金は譲渡側の費用となり、その年の所得計算に影響します。もう一つは勤続年数を引き継ぐ扱いとする方法で、将来の支払いを買い手が負担することになるため、その分を譲渡価格から差し引く調整が行われます。
医療法人の持分を譲渡する形では、法人格が残るため、将来の支払い義務も法人に残ります。引当金が計上されていなくても負担は存在するため、買い手はこれを織り込んで価格を判断します。
なお、将来の支払いに備える手段としては、引当金を計上する以外に、外部の制度を利用する方法があります。中小企業退職金共済に加入して掛金を拠出する形であれば、掛金は支払った時点で損金または必要経費として扱われ、退職金は制度から直接支払われます。この形をとっていれば、法人の内部に将来の負担が積み上がらないため、承継の場面での論点が減ります。
譲渡側の準備としては、引当金の計上の有無にかかわらず、将来の支払い見込額を把握しておくことが有効です。金額を自ら明らかにしておけば、交渉の場で不意に持ち出されることがなくなります。医療分野に詳しい税理士に、現時点での見込額の算出を依頼しておくことをおすすめします。
考え方の基礎にあるのは、費用をいつの期間に割り当てるかという発想です。退職金は退職の時点でまとめて支払いますが、その支払いの原因はスタッフが在職して働いてきた期間にあります。支払った年にだけ費用として計上すると、その年の利益が大きく落ち込み、それまでの年の利益は実態より大きく見えてしまいます。そこで、在職している期間にわたって少しずつ費用として認識し、将来の支払いに備えた負債として貸借対照表に計上します。
ここで押さえておくべきなのが、会計上の扱いと税務上の扱いが一致しないという点です。かつては税務上も一定の範囲で引当金の計上が認められていましたが、この制度は税制改正によって廃止され、経過措置を経て現在は損金として認められません。つまり、会計上は引当金を計上して費用としても、税務上はその分が損金不算入となり、課税所得の計算では加算されることになります。実際に退職金を支払った時点で損金となる扱いです。
この違いが、医院の実務に影響します。中小規模の医療法人や個人立の診療所では、税務申告を基礎とした会計処理を行っていることが多く、税務上損金にならない引当金をあえて計上する動機が生まれません。その結果、退職金の規定はあるのに引当金は計上されていないという状態が一般的になります。決算書の負債の部を見ても、将来の支払い義務は現れません。
承継の場面では、この計上されていない負担を洗い出す作業が必要になります。退職金の規定を確認し、対象となるスタッフごとに勤続年数と算定の基礎となる給与額を突き合わせ、現時点で全員が退職したと仮定した場合の支給額を計算します。この金額が簿外債務として扱われ、時価純資産を算定する際に負債として織り込まれます。長く勤めているスタッフが複数いれば、相当な額になります。
規定が存在しない場合でも、確認を省略することはできません。明文化された規定がなくても、これまで退職者に一定の基準で退職金を支払ってきた実績があれば、慣行として支払う義務が生じると判断されることがあります。過去の支給の履歴を確認する作業が必要です。
スキームによる扱いの違いも押さえておきます。個人立の診療所を事業譲渡で引き継ぐ場合、雇用関係は自動的には承継されないため、譲渡側がそれまでの勤続分を精算して支払うという整理が一つの方法になります。この場合、支払った退職金は譲渡側の費用となり、その年の所得計算に影響します。もう一つは勤続年数を引き継ぐ扱いとする方法で、将来の支払いを買い手が負担することになるため、その分を譲渡価格から差し引く調整が行われます。
医療法人の持分を譲渡する形では、法人格が残るため、将来の支払い義務も法人に残ります。引当金が計上されていなくても負担は存在するため、買い手はこれを織り込んで価格を判断します。
なお、将来の支払いに備える手段としては、引当金を計上する以外に、外部の制度を利用する方法があります。中小企業退職金共済に加入して掛金を拠出する形であれば、掛金は支払った時点で損金または必要経費として扱われ、退職金は制度から直接支払われます。この形をとっていれば、法人の内部に将来の負担が積み上がらないため、承継の場面での論点が減ります。
譲渡側の準備としては、引当金の計上の有無にかかわらず、将来の支払い見込額を把握しておくことが有効です。金額を自ら明らかにしておけば、交渉の場で不意に持ち出されることがなくなります。医療分野に詳しい税理士に、現時点での見込額の算出を依頼しておくことをおすすめします。