独占交渉|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

独占交渉

どくせんこうしょう

独占交渉

どくせんこうしょう

独占交渉とは、一定の期間、譲渡側が特定の候補者とだけ優先的に交渉を進める状態をいいます。その期間中は他の候補者と交渉することができません。医院の承継では、基本合意の段階でこの取り決めがなされることが多く、デューデリジェンスから最終契約に向かう局面を支える仕組みとして機能します。

この取り決めが必要とされるのは、買い手側の負担を保護するためです。デューデリジェンスには費用と時間がかかります。財務や税務の調査を税理士や公認会計士に依頼し、契約関係の確認を弁護士に依頼し、労務の状況を社会保険労務士に確認してもらうという作業には、相応の支出が伴います。医院の場合はさらに、設備の状態の確認、診療実績の分析、診療圏の調査も加わります。これだけの費用をかけた後に、譲渡側が別の候補者と契約してしまうのであれば、買い手は調査に踏み込めません。

譲渡側にとっても意味があります。複数の候補者と同時に詳細な情報を開示すれば、医院名や診療実績、患者層に関する情報を知る人が増えます。医院の承継では、情報が地域に漏れると患者さんの通院控えやスタッフの離職につながり、案件の価値そのものが損なわれます。相手を一人に絞ることで、開示の範囲を管理できるようになります。加えて、一人の相手と集中して交渉することで、条件の詰めが早く進むという実務上の利点もあります。

一方で、譲渡側が負うリスクは明確です。期間中に他の候補者と交渉できないため、より良い条件を提示する相手が現れても応じられません。そして最も注意すべきなのが、デューデリジェンスの結果を理由に大幅な減額を求められる場合です。他に交渉相手がいない状態では、譲渡側は応じるか交渉を打ち切るかの二択になり、立場が弱くなります。独占交渉を承諾する前に、その相手と本当に進める意思があるかを固めておく必要があります。

そのため、取り決めの内容を具体的に確認することが重要になります。まず期間です。三か月から半年程度で設定されることが多く、デューデリジェンスに要する期間と行政手続きの見通しを踏まえて決めます。医院の承継では、保険医療機関の指定に関わる手続きの日程が全体を左右するため、その確認に必要な時間を見込んでおきます。期間が長すぎると、条件が折り合わなかった場合に大きく時間を失います。

次に、延長の扱いです。自動的に延長される形になっているのか、双方の合意が必要なのかを確認します。自動延長の条項があると、意図せず拘束が続くことになります。

さらに、解除の条件です。買い手側が資金調達に至らない、調査を進める姿勢が見られない、期限までに条件を提示しないといった場合に、譲渡側から取り決めを終わらせられるかを確認しておきます。誠実に協議する義務を定める条項が置かれることもありますが、実際にそれを根拠として何を求められるかは明確でないため、具体的な解除の要件を設けておくほうが実用的です。

医院の承継における実務上の留意点として、期間中に承継の準備が止まらないようにするという点があります。独占交渉に入ったからといって承継が確実になったわけではありません。この期間に前院長が引継ぎの計画を進め、資料を整え、行政手続きの確認を行っておけば、成立した場合の進行が速くなります。逆に不成立となった場合も、整えた資料は次の候補者との交渉に使えます。

また、この期間に他の候補者との関係をどう扱うかも考えておきます。関心を示していた候補者に対して、今は別の相手と話を進めているという事情を伝えるのか、単に保留とするのか。不成立になった場合に改めて声をかける可能性を考えれば、関係を断たない形での対応が望まれます。

独占交渉は、双方が本気で進めるための仕組みですが、譲渡側にとっては選択肢を一時的に手放すことでもあります。相手を見極めたうえで、期間と解除の条件を確認して承諾することをおすすめします。
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