吸収分割
きゅうしゅうぶんかつ
吸収分割とは、法人が営んでいる事業の一部を切り出して、既存の他の法人に承継させる組織再編の手法をいいます。会社法に定められた会社分割の一形態で、事業を受け入れる側が既存の法人である場合をこう呼びます。新たに設立する法人に承継させる場合は新設分割となります。
会社分割の特徴は、事業を単位として権利義務をまとめて移せることにあります。事業譲渡では資産や契約を一つずつ選んで移し、契約については相手方の同意を個別に得る必要があります。これに対して分割では、承継する事業に属する権利義務が包括的に移転するため、個別の同意を得ずに契約を移せる場面があります。手続きの効率という点で優れた手法です。
ただし、医院の承継においてこの手法を検討する際には、制度の枠組みを正確に理解しておく必要があります。会社法に定められた会社分割は、株式会社や合同会社といった会社を対象とした制度であり、医療法人にそのまま適用されるものではありません。医療法人は医療法に基づいて設立される法人であり、組織再編についても医療法の定めに従います。
医療法人の分割については、医療法の改正によって制度が設けられています。事業の一部を他の医療法人に承継させる形と、新たに設立する医療法人に承継させる形が定められており、会社分割と似た構造を持っています。ただし医療法人に固有の制限があります。持分の定めのある医療法人は分割を行うことができないとされており、特定の類型の医療法人についても対象から除かれています。現在存続している持分あり医療法人が多いことを踏まえると、この制限によって実際に分割を選べる法人は限られます。
手続きの面でも負担が重くなります。社員総会での決議を経たうえで、都道府県知事の認可を申請します。認可に際しては都道府県の医療審議会の意見を聴く手続きが設けられており、審議会の開催時期に日程が左右されます。年に数回の開催であることが多いため、申請の時期を逃すと数か月の遅れが生じます。分割に異議のある債権者に申し出の機会を与えるための期間も必要です。
さらに、承継される診療所について行政手続きの確認が必要です。分割によって開設者が変わることになる診療所については、届出と保険医療機関の指定に関する手続きが求められる場合があります。この取扱いは所管によって異なることがあるため、保健所と厚生局への事前の相談が欠かせません。指定の空白期間が生じると保険診療の報酬を請求できないため、日程の管理が重要になります。
こうした事情から、クリニックの承継において分割が用いられることはほとんどありません。複数の診療所を運営する医療法人が、そのうちの一つを切り出して他の法人に移したいという場面を想定しても、実務では事業譲渡によって対応することが一般的です。事業譲渡であれば認可を要さず、契約を個別に引き継ぐ手間はかかるものの、短い期間で実行できます。移す対象を選別できるため、簿外債務のリスクを限定できるという利点もあります。
一方で、分割という手法が意味を持つ場面もあります。規模のある医療法人が、複数の医療機関を再編して運営体制を整える場合、あるいは診療所と介護事業を分けて別の法人で運営する体制に移す場合などです。事業に属する権利義務をまとめて移せるため、対象が大きくなるほど個別に契約を移す負担との差が開きます。
税務については、一定の要件を満たす場合に資産の含み損益に対する課税を繰り延べられる仕組みがあります。要件を満たすものを適格分割、満たさないものを非適格分割と呼び、後者では資産を時価で移転したものとして課税が生じます。要件の判定は複雑であり、専門的な検討が必要です。
医院の承継を検討する際に、この用語を目にすることはあまり多くありません。もし提案を受けた場合は、対象となる医療法人が分割を行える類型に該当するのか、認可に要する期間はどれだけか、事業譲渡と比べて本当に有利なのかを確認する必要があります。医療法人の組織再編に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
会社分割の特徴は、事業を単位として権利義務をまとめて移せることにあります。事業譲渡では資産や契約を一つずつ選んで移し、契約については相手方の同意を個別に得る必要があります。これに対して分割では、承継する事業に属する権利義務が包括的に移転するため、個別の同意を得ずに契約を移せる場面があります。手続きの効率という点で優れた手法です。
ただし、医院の承継においてこの手法を検討する際には、制度の枠組みを正確に理解しておく必要があります。会社法に定められた会社分割は、株式会社や合同会社といった会社を対象とした制度であり、医療法人にそのまま適用されるものではありません。医療法人は医療法に基づいて設立される法人であり、組織再編についても医療法の定めに従います。
医療法人の分割については、医療法の改正によって制度が設けられています。事業の一部を他の医療法人に承継させる形と、新たに設立する医療法人に承継させる形が定められており、会社分割と似た構造を持っています。ただし医療法人に固有の制限があります。持分の定めのある医療法人は分割を行うことができないとされており、特定の類型の医療法人についても対象から除かれています。現在存続している持分あり医療法人が多いことを踏まえると、この制限によって実際に分割を選べる法人は限られます。
手続きの面でも負担が重くなります。社員総会での決議を経たうえで、都道府県知事の認可を申請します。認可に際しては都道府県の医療審議会の意見を聴く手続きが設けられており、審議会の開催時期に日程が左右されます。年に数回の開催であることが多いため、申請の時期を逃すと数か月の遅れが生じます。分割に異議のある債権者に申し出の機会を与えるための期間も必要です。
さらに、承継される診療所について行政手続きの確認が必要です。分割によって開設者が変わることになる診療所については、届出と保険医療機関の指定に関する手続きが求められる場合があります。この取扱いは所管によって異なることがあるため、保健所と厚生局への事前の相談が欠かせません。指定の空白期間が生じると保険診療の報酬を請求できないため、日程の管理が重要になります。
こうした事情から、クリニックの承継において分割が用いられることはほとんどありません。複数の診療所を運営する医療法人が、そのうちの一つを切り出して他の法人に移したいという場面を想定しても、実務では事業譲渡によって対応することが一般的です。事業譲渡であれば認可を要さず、契約を個別に引き継ぐ手間はかかるものの、短い期間で実行できます。移す対象を選別できるため、簿外債務のリスクを限定できるという利点もあります。
一方で、分割という手法が意味を持つ場面もあります。規模のある医療法人が、複数の医療機関を再編して運営体制を整える場合、あるいは診療所と介護事業を分けて別の法人で運営する体制に移す場合などです。事業に属する権利義務をまとめて移せるため、対象が大きくなるほど個別に契約を移す負担との差が開きます。
税務については、一定の要件を満たす場合に資産の含み損益に対する課税を繰り延べられる仕組みがあります。要件を満たすものを適格分割、満たさないものを非適格分割と呼び、後者では資産を時価で移転したものとして課税が生じます。要件の判定は複雑であり、専門的な検討が必要です。
医院の承継を検討する際に、この用語を目にすることはあまり多くありません。もし提案を受けた場合は、対象となる医療法人が分割を行える類型に該当するのか、認可に要する期間はどれだけか、事業譲渡と比べて本当に有利なのかを確認する必要があります。医療法人の組織再編に詳しい専門家に相談することをおすすめします。