給与規定|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

給与規定

きゅうよきてい

給与規定

きゅうよきてい

給与規定とは、賃金の体系や支給の条件、計算の方法を定めた規程をいいます。賃金規程と呼ばれることもあります。就業規則の一部として定められる場合と、別の規程として独立させる場合があります。医院の承継では、人件費の実態を把握し、承継後の運営を見通すための資料として確認されます。

医院の給与規定に定められる内容は、基本給の考え方から始まります。職種ごとの体系、経験年数や資格による差、昇給の仕組みといった要素です。医院では医師、看護師、看護助手、医療事務、放射線技師や臨床検査技師といった職種が混在し、それぞれ求められる資格と業務が異なるため、職種別の体系が必要になります。

手当の設計は、医院に特徴が現れる部分です。看護師や准看護師、放射線技師、臨床検査技師といった資格に対する手当、主任や師長といった役職に対する手当、時間外や休日の診療に対応した際の手当、当直やオンコールの待機に対する手当、通勤手当や住宅手当といった項目が置かれます。特に当直やオンコールの扱いは、待機している時間を労働時間として扱うのか、手当で対応するのかという整理が必要で、実態と規程が合っていないと後に問題になります。

賞与についても定めが置かれます。支給の時期、算定の基礎、査定の方法、支給の対象となる在籍の条件といった内容です。医院では院長の裁量で決められている場合が多く、規程に明記されていないことも珍しくありません。その場合、承継後に新院長がどう扱うかで混乱が生じます。

承継の場面でこの規程が重要になる理由は三つあります。

第一に、人件費の実態を把握するためです。医院の費用の中で人件費は大きな割合を占めます。決算書の人件費の総額だけでは、それが妥当な水準なのか、承継後に維持できるのかが判断できません。規程と給与台帳を照らし合わせることで、職種別の水準、勤続年数による構成、手当の内訳が見えてきます。地域の相場と比べて高いのか低いのかという判断も、この作業を通じて行われます。

第二に、正常収益力を算定するためです。医院では、院長の配偶者やご家族が職員として給与を受けている場合があります。実際に勤務していない、あるいは勤務の実態に見合わない額が支払われているのであれば、その差額は承継後には発生しない費用として調整されます。この調整が譲渡価格に直接影響します。逆に、院長が自ら担っていた業務を承継後に人を雇って行う必要があるのであれば、その費用を織り込む必要があります。

第三に、簿外債務の有無を確認するためです。規程に定められた手当が実際には支払われていない、時間外の算定方法が法令に沿っていない、といった状態があれば、未払いの賃金として過去にさかのぼった負担が生じます。請求できる期間は法律の改正によって延長されているため、金額は相当な額になり得ます。医療法人を引き継ぐ形では法人格が残るため、この負担もそのまま承継されます。

承継後の運用についても、あらかじめ整理しておく必要があります。個人立の診療所を事業譲渡で引き継ぐ場合、雇用関係は自動的には承継されず、譲渡側での退職と譲受側での再雇用という形をとるのが原則です。この際に給与の条件を引き継ぐのか、新しい体系に合わせるのかという判断が生じます。条件を下げれば、長く勤めてきたスタッフが辞めてしまう可能性があります。看護師や医療事務のスタッフが残ってくれるかどうかは、承継後の運営を大きく左右するため、慎重な扱いが求められます。

買い手が既に医療機関を運営している法人である場合、法人の給与体系に統一するという動きが生じることがあります。既存のスタッフの条件が変わる可能性があるため、譲渡側としては待遇の維持を条件に含めるかを検討します。

譲渡側の準備としては、規程が現在の運用と一致しているかを確認することが第一歩になります。実態に合っていない部分があれば、承継の交渉に入る前に整理しておくほうが、後の指摘を避けられます。社会保険労務士や医療分野に詳しい専門家に確認を依頼しておくことをおすすめします。
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