表明保証保険
ひょうめいほしょうほけん
表明保証保険とは、表明保証の違反によって生じた損害を補填することを目的とした保険をいいます。最終契約で譲渡側が表明保証の責任を負う仕組みに対して、その責任を保険でカバーするという発想に基づくものです。M&A保険とも呼ばれます。
この保険が生まれた背景には、表明保証をめぐる双方の事情があります。譲渡側としては、承継を終えた後まで責任を負い続けることを避けたいと考えます。特に医院の承継では、院長が引退して収入がなくなった後に補償を求められると、対応が難しくなります。一方、買い手としては、表明保証があっても実際に補償を受けられるかは相手方の資力に左右されるため、確実性に不安が残ります。この双方の不安を、保険という第三者の引受けによって解消しようとするのが趣旨です。
保険の型は二つに分かれます。一つは譲渡側が加入する型で、自らが負う補償責任について保険金を受け取る形です。もう一つは買い手が加入する型で、損害が生じた場合に譲渡側ではなく保険会社から直接補償を受ける形です。実務では買い手が加入する型が多く用いられています。譲渡側の資力に依存しないという確実性があるためです。
保険を利用することの利点として、まず譲渡側の負担を軽くできる点があります。表明保証の責任を保険で肩代わりできれば、譲渡対価の一部を留保しておく必要がなくなり、手取りを早く確定させられます。次に、交渉が円滑になる点です。表明保証の範囲や補償の上限をめぐる交渉は難航しがちですが、保険で対応できる部分があれば折り合いをつけやすくなります。
一方で、医院の承継においてこの保険を使う場面は限られています。理由の第一は、案件の規模です。表明保証保険は、もともと規模の大きいM&Aを対象として設計されており、保険料の水準や引受けの基準がそれを前提としています。クリニック一施設の承継のような規模では、保険料が譲渡対価に対して割高になり、費用のつり合いが取れません。保険会社が引受けの対象としない場合もあります。
第二の理由は、引受けの前提として詳細なデューデリジェンスが求められることです。保険会社は、どのようなリスクを引き受けるのかを判断するために、調査報告書の提出を求めます。医院の承継では、費用を抑えるために調査の範囲を絞ることが多く、保険会社が求める水準の報告書が作成されないことがあります。
第三に、補償の対象から除かれる範囲があるという点です。デューデリジェンスで既に判明している事項、譲渡側が認識していた事項、将来の見通しに関する事項は、一般に補償の対象になりません。また、医療機関に固有のリスクである医療事故や診療報酬の返還、未払残業代といった項目については、引受けの対象から除外される場合があります。医院の承継で懸念される負担の多くが対象外になるのであれば、加入する意味は薄くなります。
そのため、クリニックの承継における実務では、保険を使わずに契約条項の設計で対応する形が一般的です。具体的には、表明保証の責任を負う期間を一年から二年程度に限る、補償の上限を譲渡対価の一定割合に定める、少額の損害は補償の対象から外す、といった方法です。加えて、譲渡対価の一部をクロージング後の一定期間留保しておき、問題が生じなければ支払うという設計も用いられます。
譲渡側としては、責任を限定する交渉を丁寧に行うことが、保険に代わる備えになります。デューデリジェンスの段階で課題を隠さずに開示しておけば、その事項は表明保証の対象から除外されるという整理につながります。結果として、後から責任を問われる余地が減ります。
表明保証保険は、規模の大きい案件では有用な選択肢ですが、医院の承継では現実的でない場合が多くあります。契約条項による責任の限定を中心に据えて、弁護士や医療分野に詳しい専門家と設計を検討することをおすすめします。
この保険が生まれた背景には、表明保証をめぐる双方の事情があります。譲渡側としては、承継を終えた後まで責任を負い続けることを避けたいと考えます。特に医院の承継では、院長が引退して収入がなくなった後に補償を求められると、対応が難しくなります。一方、買い手としては、表明保証があっても実際に補償を受けられるかは相手方の資力に左右されるため、確実性に不安が残ります。この双方の不安を、保険という第三者の引受けによって解消しようとするのが趣旨です。
保険の型は二つに分かれます。一つは譲渡側が加入する型で、自らが負う補償責任について保険金を受け取る形です。もう一つは買い手が加入する型で、損害が生じた場合に譲渡側ではなく保険会社から直接補償を受ける形です。実務では買い手が加入する型が多く用いられています。譲渡側の資力に依存しないという確実性があるためです。
保険を利用することの利点として、まず譲渡側の負担を軽くできる点があります。表明保証の責任を保険で肩代わりできれば、譲渡対価の一部を留保しておく必要がなくなり、手取りを早く確定させられます。次に、交渉が円滑になる点です。表明保証の範囲や補償の上限をめぐる交渉は難航しがちですが、保険で対応できる部分があれば折り合いをつけやすくなります。
一方で、医院の承継においてこの保険を使う場面は限られています。理由の第一は、案件の規模です。表明保証保険は、もともと規模の大きいM&Aを対象として設計されており、保険料の水準や引受けの基準がそれを前提としています。クリニック一施設の承継のような規模では、保険料が譲渡対価に対して割高になり、費用のつり合いが取れません。保険会社が引受けの対象としない場合もあります。
第二の理由は、引受けの前提として詳細なデューデリジェンスが求められることです。保険会社は、どのようなリスクを引き受けるのかを判断するために、調査報告書の提出を求めます。医院の承継では、費用を抑えるために調査の範囲を絞ることが多く、保険会社が求める水準の報告書が作成されないことがあります。
第三に、補償の対象から除かれる範囲があるという点です。デューデリジェンスで既に判明している事項、譲渡側が認識していた事項、将来の見通しに関する事項は、一般に補償の対象になりません。また、医療機関に固有のリスクである医療事故や診療報酬の返還、未払残業代といった項目については、引受けの対象から除外される場合があります。医院の承継で懸念される負担の多くが対象外になるのであれば、加入する意味は薄くなります。
そのため、クリニックの承継における実務では、保険を使わずに契約条項の設計で対応する形が一般的です。具体的には、表明保証の責任を負う期間を一年から二年程度に限る、補償の上限を譲渡対価の一定割合に定める、少額の損害は補償の対象から外す、といった方法です。加えて、譲渡対価の一部をクロージング後の一定期間留保しておき、問題が生じなければ支払うという設計も用いられます。
譲渡側としては、責任を限定する交渉を丁寧に行うことが、保険に代わる備えになります。デューデリジェンスの段階で課題を隠さずに開示しておけば、その事項は表明保証の対象から除外されるという整理につながります。結果として、後から責任を問われる余地が減ります。
表明保証保険は、規模の大きい案件では有用な選択肢ですが、医院の承継では現実的でない場合が多くあります。契約条項による責任の限定を中心に据えて、弁護士や医療分野に詳しい専門家と設計を検討することをおすすめします。