みなし配当|医療機関のM&A、譲渡、売却をお考えの皆様へ

みなし配当

みなしはいとう

みなし配当

みなしはいとう

みなし配当とは、形式上は配当という形をとっていなくても、実質的には利益の分配にあたるとして、税務上は配当を受け取ったものとして扱われる金額をいいます。法人から出資者へ資金が戻る場面のうち、出資として払い込んだ元本を超える部分が、実質的に法人が蓄積してきた利益の分配にあたると考えられる場合に適用されます。

考え方の背景には、課税の公平があります。法人が稼いだ利益を配当として分配すれば、受け取った側で配当としての課税を受けます。ところが、配当という名目を使わずに別の形で資金を渡せば、その課税を避けられることになってしまいます。そこで、名目にかかわらず実質を見て、利益の分配にあたる部分を配当として扱うという整理がなされています。

一般の株式会社では、自己株式の取得、資本の払戻し、解散に伴う残余財産の分配、一定の組織再編といった場面でこの扱いが生じます。株主に戻る金額のうち、出資に対応する部分を超える金額が、みなし配当として課税の対象になります。

医院の承継においてこの用語が重要になるのは、持分のある医療法人が関わる場面です。医療法人は非営利法人であり、剰余金の配当が禁止されています。そのため、通常の意味での配当が行われることはありません。しかし、社員が退社する際に出資持分の払戻しを受ける、あるいは法人が解散して残余財産が分配されるといった場面では、法人に蓄積されてきた利益が出資者に戻ることになります。

医療法人は配当が禁止されている構造上、毎年の利益が法人の内部に蓄積され続けます。長く堅実に運営してきた法人ほど、この内部留保が相当な額に積み上がります。出資持分の払戻しを受ける際には、当初拠出した出資金の額を大きく上回る金額が戻ることになり、その差額の扱いが問題になります。

ここで実務上きわめて重要なのが、資金を受け取る方法によって課税の扱いが変わるという点です。社員を退社して法人から持分の払戻しを受ける形と、持分を第三者に譲渡して対価を受け取る形とでは、所得の区分が異なる整理となる場合があります。所得の区分が変われば、適用される計算方法や税負担が変わり、結果として手取り額に大きな差が生じます。

このため、医療法人の承継を検討する際には、どの方法で資金を受け取るかを事前に試算しておく必要があります。譲渡対価として受け取るのか、退社に伴う払戻しとして受け取るのか、あるいは役員退職金という形を組み合わせるのか。それぞれの組み合わせによって手取り額は変わり、その差は場合によっては大きなものになります。承継の条件を決めてから税務を検討するのでは順序が逆で、試算を踏まえて条件を設計するのが本来の進め方です。

なお、この領域の取扱いは、法人の類型、定款の定め、資金が移動する具体的な経緯によって判断が分かれます。持分のない医療法人であれば、そもそも出資持分が存在しないため、この論点は生じません。基金拠出型の医療法人における基金の返還は、出資の払戻しとは異なる枠組みで整理されます。二〇〇七年の医療法改正以降、持分のある医療法人は新たに設立できなくなっており、既存の法人は経過措置として存続している位置づけです。

また、持分のある医療法人が持分のない医療法人へ移行する際にも、この論点が関わります。移行に伴って出資持分は消滅するため、その扱いをどう整理するかが検討事項になります。一定の要件を満たして認定を受けることで、移行に伴う税負担について優遇を受けられる制度が設けられています。

承継の場面では、デューデリジェンスの税務の領域で、過去に持分の払戻しが行われた履歴があるか、その際の課税関係が適正に処理されているかが確認されます。処理に誤りがあれば、追徴課税のリスクとして残ります。

みなし配当は、医療法人の承継における手取り額を左右する論点です。ただし個別の事情によって判断が異なる領域ですので、必ず医療法人の税務に詳しい税理士に、具体的な試算と確認を依頼することをおすすめします。
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